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「イタタタタタァ!!」 「な、何よ、これ……」 「頭が痛い!」 「望愛、止めて!!」  ノアという女性はフルートを吹き続ける。  傍にいる天堂オーナーやMegaGirlsメンバー悶え苦しんでいた。  それは彼らだけではない、球場にいる者の全てが頭痛に悩まされ、吐き気に襲われる。  それはデホとブルクレスを除く鐘刃サタンスカルズも同じだ。 「ぐ、ぐあァ……」 「か、鐘刃様!?」  苦しむ部下を見る鐘刃、その目は僕達を見た時と同じ侮蔑の眼差しだ。 「過程はどうあれ、君達は負けた。一試合完全燃焼してもらわなきゃダメだよ」 「そ、そんな……そもそも9人なんてギリギリの人数で――」  先発を務めたデーモン66号。  頭を抑えながら這いつくばり、鐘刃の前に跪いた。  その姿はまさに魔王イブリトス戦の時のオニキア同じ姿だった。 「炎上したお前が言うな」  鐘刃は右足を大きく足を引いていた。  まさか……。 ――ドギャッ! 「グバァ!?」  顔面を蹴り上げられたデーモン66号。 「ア”ア”ア”……」  空中で約7回転し頭から地面に激突、全身を痙攣させていた。 「鐘刃サタンスカルズに労働基準法はない」 「く、くそう……」 「いいチームだと思ったのに」 「口を慎み給え。そもそもクビになったり、ドラフト会議で指名漏れしたポンコツのお前らに誰が『異世界の力』を与えてやったと思っているんだ」  こいつ等は元プロ野球選手だったり、プロを目指していたアマチュアの集まりだったのか。  オニキア達も同じように、鐘刃から『異世界の力』というものを授けられたというわけか。  そうなると、二流の選手でも一流選手以上の力を発揮するのも造作もないことだ。 「さてと、この素晴らしい演奏会にはまだスパイスが足りない」 ――ズズッ……  地中から何かが出て来た。  腐乱した体、あるいは骨、もしやこれは……。 「ここで君達に地獄の亡者どもをプレゼントしよう」  土より這い出たのはゾンビやスケルトン。  何故か野球のユニフォームを着ており、バットやグラブを身に付けている。  鐘刃は突然現れた亡者達に対しての説明を行う。 「こいつらは、嫌な形で野球と携わり恨みを残して死んだ者どもだ。野球に関わる生者に対し酷く攻撃だぞ」 『何が甲子園だ。炎天下の中を水分補給なしで走らされ、俺は熱中症で死んだ……野球なんてものがなけりゃ俺は青春を謳歌出来たんだ』 『お前らは野球を楽しみやがって……俺らの頃は敵国スポーツとして白い目で見られてたんだぞ』  ゾンビやスケルトンは各々、野球に対する恨み、野球を行う者へと嫉妬に満ち溢れていた。  そんな不死の魔物達を見て、元山と森中さんが言った。 「RPGの世界じゃねェかよ」 「生きている俺らに何の罪があるんだーっ!?」  鐘刃は顔が青くなるメガデインズのメンバーを見ながら妖しく笑う。 「平和ボケしてるね」  そして、デホとブルクレス達に言った。 「デホさん、ブルクレスさん。ここはノアちゃんに任せて帰りましょうか」  呼びかけられたデホとブルクレス、彼らは何故か平気な顔をしている。 「「ハハッ!」」  二人は異口同音の返事をすると、鐘刃の元へと近付く。  そうすると鐘刃は呪文を唱えた。 ――テレポレート!  瞬間移動呪文テレポレートで、鐘刃達3人は球場を去って行った。  残されたのは魔音の響きと亡者達だけだ。  まさにここは地獄……。 「うわあーっ!?」 「た、助けてくれ……」  残された鐘刃サタンスカルズのメンバーは亡者達に襲われている。  僕は痛みを堪えながら、彼らを助けるべく魔物達に立ち向かった。 『待てい!』  一体のスケルトンが立ちはだかった。  他のスケルトンとは違い、黄金の色をしている。  魔物で言うならばスケルトンロードであろう。 『我が名は青嶺旋風あおみねせんぷう……打撃の真髄を極めし者!!』  誰だか分からないが、生前は野球を極めし男だったようだ。  西木さんが痛みを堪えながら説明してくれた。 「あ、青嶺旋風……消滅した幻の球団『乙梅おとうめタックス』の伝説的強打者。独自に編み出した『合気ゴルフスイング打法』により野球界をチート無双。だが、変わり者で次第にチームから孤立し引退。引退後はコーチ職を熱望したが元来コミュ障だったので友達が少なく、お呼びがかからず無念の死を遂げたという……」  このスケルトンロードは、生前この世界における伝説的選手だったのか。  鐘刃が復活させた野球亡者の中に含まれていたということは、他のゾンビやスケルトンもそれなりに名を成した者達だったに違いない。 『我の臍下丹田に気を集中し、光よりも早く振るスイングを見るがいいわ!』  よく分からないことを、このスケルトンロードは言っている。  これではコーチとして声がかからないのも無理はないだろう。  スケルトンロードは手に持った青バットを持って襲い掛かって来た。 『主らとはロボットが違う!』  難解なことを言ってバットを振り上げて来た。  僕はとっさに構えるも―― ――バカッ! 『ヤハタッ!?』  スケルトンロードは横から蹴飛ばされ粉々にされた。 「青嶺旋風……無残な姿になったものよ」  シュランだ。  いつの間に意識を取り戻したのだ、僕は警戒して見るも……。 「このやかましい音は何なのだ」 「シュ、シュラン?」 「シュラン? 何だその安っぽい名前は、某の名は小倉宗入。トライアウトを受ける前に山へと入ったのだが――」  何だか古典的な野球山籠もりをしたところ、何らかの形で鐘刃に操られてしまったようだ。  小倉は天然なのか、肝が据わり過ぎているのか、周りがゾンビやスケルトンだらけなのに冷静だ。  スケルトンロードの傍により青バットを見ている。 「これは某が求めていた伝説の青バット……メ〇カリで落札できなかった代物がよもやこんなところに」 『これを渡すわけには……』  粉々になるも、スケルトンロードは僅かに動きながら喋っていた。  小倉はスケルトンロードと化した青嶺に哀れみの目を向けている。 「変わり果てた姿ではあるが、お主が青嶺旋風か。その残した伝説、打撃理論の書籍を悉く見聞致し申した」 『貴殿は我の存在を知っておるのか?』 「当たり前田のクラッカー! 某は投手から野手へと転向し打撃に悩み暗中模索しているところ、青嶺殿が残した自費出版書『青嶺旋風の10倍楽しく振る方法』をブッ〇オフで発見、消費税込みの880円で購入致した」 『な、ならば……』 ――ドン!(ドヤ顔) 「合気ゴルフスイング打法は某が極め申す!!」 『あの全然売れなかった本を購入した貴殿には何も言うまい……我が打撃の真髄を後世へと伝えくれ』 「任せられよ。それから昇天する前にバットにサインを……」 『よかろう』  その言葉を残しスケルトンロードは動かなくなった。  何だか僕や他の皆がおいてけぼりだが、小倉のある状態が気になって尋ねた。 「それより君は何で平気なの?」 「耳を塞げば何ともないぞ」

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