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「こ、ここは……」  僕達メガデインズは再び元の世界へ戻ってきたようだ。  目の前には禍々しい髑髏どくろをモチーフとした筒状のコロシアム。  つまりドーム球場があった。 ――キュキュッ…… 『鐘刃周のいる〝瞑瞑ドーム〟だ』  ホッグスくんが全員にカンペを見せる。  西木さんやオニキアは瞑瞑ドームを見上げている。 「こ、ここが……」 「邪悪な気配を感じるわ」 ――キュキュッ…… 『私が既に根回しはいといた! さぁ最終決戦ラストバトルだ!!』 「ラ、ラストバトルって」 ――キュキュッ…… 『勇者アランよ、他のメンバーには既に事情は説明している。細けェことは気にせず、気兼ねなくラスボスを倒すのだ!』  異世界へと自由に行き来する能力といい、思わせぶりなセリフや行動の数々。  やはりホッグスくんの正体は……僕は思い切って尋ねることにした。 「オディリスなのかい?」  ホッグスくんは暫し沈黙した後にこう答えた。 ――キュキュッ…… 『中の人などいない!』  カンペには力強く書かれている。  中の人などいない……そうは言っても怪しすぎる行動が多すぎる。 ――ピラリ……  ホッグスくんはカンペを一枚めくる。 『セーブも何もない、このままラストダンジョンへ突入するぞ!』  ラ、ラストダンジョン……。  確かに禍々しい雰囲気だがオーバーな物言いだ。 ――タタタッ……  ホッグスくんは小走りにドーム球場へと入って行った。 「あっ! ちょ、ちょっと!!」 「うちら、あの着ぐるみに遊ばれてへんか……」  マリアムがこの駆け足な流れを見てそう言った。  やはりホッグスくんの中の人はオディリスではないのか。  そう思った時だ。 「オディリスって誰だい?」  天堂オーナーだ。 「知り合いの名前です。オーナーはホッグスくんの正体を知っていますか?」 「そ、それは……む、むぐぐ……」  何やら言葉に詰まっている。  タブー中のタブーに触れてしまったのだろうか。 「天堂オーナーもういいでしょう」 「に、西木くん」  何やら事情を知っているであろう西木さん。  かなり真剣な眼差しで僕に話しかけて来た。 「ホッグスくんは影のGMだ。大昔より浪速メガデインズの運営を支えている」  か、影のGM?  そもそもGMって何だろうか……。 「GMって何ですか?」  僕の言葉にマリアムが解説する。 「ゼネラルマネージャーや。簡単に言えば、チーム編成に全体的に携わる仕事をする人の事やな」  チーム編成を行うということは、球団内でもかなりの権限を持っているということか。  僕の世界で言ったら国王級に偉い人物ということになる。  そんな人が何故ハリネズミの着ぐるみで仕事をしているのだろうか。 「もうこうなったら話そうか」  天堂オーナーが観念したかのように話し始めた。 「僕の祖父である天堂一茶の趣味が高じて、プロ野球球団『浪速メガデインズ』を結成したのは約十数年前。結成したのはいいが、暗く陰気な雰囲気で『灰色のチーム』と言わるほどの超弱小チームだった」 「それって以前と変わらへんやん」  マリアムの突っ込みを聞いた、天堂オーナーは拳を固く握りながら言った。 「何を言っているんだい。昔のメガデインズは超強豪として、リーグ優勝を9連覇するほどの実力があったんだよ! それに日本一だって3年連続でなったこともあるんだ!!」 「ホンマかいな」  マリアムは疑いの目で見つめる。そこに鳥羽さん達が話に入って来た。 「その話は本当だぜ」 「俺達はメガデインズのOB達と会ってきたンだ」 「数々の自慢話……いや昔話を聞かされたぜ」 「ど、どういうことですか?」  僕の質問に森中さんと安孫子さんが答えた。 「黄金時代を築いたOB達は元々異世界の住人だ。『球聖の村』ってところの村民として暮らしていたンだ」 「全員がレベル99のチート状態。どんな魔物も野球を使った特技やスキルってやつで瞬殺だ。俺らはそんなバケモノOB達にしごかれレベルアップしたって寸法よ」 「い、異世界の住人? 誰がそんなことを……」 ――ポン!  僕は大きな手で叩かれた。スペンシーさんだ。 「ゴッド……ホッグスくんさ」 「ホ、ホッグスくんが?」  真相を聞いた僕に国定さんが言った。 「私もスペンシーも元々君のような異世界の住人だ。死んでこの世界に連れて来られた」 「えっ?!」  スペンシーさんや国定さんも異世界の人間だって……。  困惑する僕にオニキアが言った。 「アラン、聞いたことない『ゾージュ』って名前」 「ゾージュ……」  僕の世界にいた伝説の魔術師の名前だ。  遊び人として生まれたゾージュという男は、ソロプレイでコツコツとレベルを上げ『賢者』となった。  だが、彼のプライドとして賢者の称号を許さず『大魔導師』という称号を自称したのだ。  合成魔法の概念を作り出した偉大な魔術師であるが、魔道を究めようと闇の術法に手を出したのが災いした。  闇魔法と他属性の魔法の合成魔法を実験していくうちに、知らず知らずのうちに生命力を削ってしまい死んだという逸話を残している。 「国定さんは、そのゾージュが転生した姿よ」 「フッ……そんな愚かな遊び人上がりの魔術師がいたな」  国定さんは自嘲しながら続けた。 「君も知っているであろう、異世界の住人を転生や転移させ野球をさせる神の存在を」  オディリスの事か?  僕がオディリスの事を思い出していると湊が言った。 「何でそんなことを?」 「浪速メガデインズを優勝させるためさ」  天堂さんが普段のおどけた態度とはがらりと変わって、急にシリアスな雰囲気となった。 「僕は球団のオーナーになる際、お父様から極秘にこのことを聞かされていてね。祖父の代からホッグスくんは旧知の間柄なんだ」 「ど、どこで知り合ったんや」  マリアムの問いに天堂オーナーは答えた。 「居酒屋」 「あっ……そう……」  マリアムが呆気なすぎる回答に肩を落とす中、天堂オーナーの話は続く。 「祖父と仲良くなったホッグスくんは、友情の証として一緒に野球観戦をした。そこで野球の楽しさを知ったのはいいが、友人である一茶のチームが弱小過ぎて哀しくなったのさ。『何としてでも、優勝させたい』その想いでGMの役職へと座った。その裏で異世界から戦士を召喚、野球選手に仕立て上げることでチームを無双させたんだけど……」 「……だけど?」 「強すぎることは罪なのだ」  強すぎることは罪? 僕が疑問に思っていると赤田さんが言った。 「プロ野球は興行だ。何度も同じチームが優勝すると、プロ野球離れが加速するのは仕方がない。子供ながらに覚えているよ『地味なメガデインズばっかりが優勝でつまらない』とな」  強すぎることは罪……。  球団努力を重ね結果が出たとしても、全体が盛り上がらないと反感を生むのか。  僕は少し胸が痛い。  オニキア達も僕ばかり活躍する冒険で、同じような思いをしたのであろう。 ――勇者はいつも、どこに行ってもチヤホヤされやがってよォッ!!  あの時にデホが急に嫉妬の感情をぶつけてきた気持ちも分かる。  僕が感傷に浸っているとマリアムが言った。 「ちょい待ちや! ホッグスくんの正体って思い切りオディリス様やん!!」 「あのね、マリアムちゃん。そのオディオって人誰なの?」 「オディオやない! オディリス!!」  マリアムがどこからともなく写真を取り出した。  クエスト通商の前でピースサインをしているオディリスである。 「誰これ? ホッグスくんの中の人とは別人だよ」 「えっ!?」  マリアムが驚くと続いてオニキアが言った。 「待って、鐘刃は確かにオディリスという悪戯の神が裏で動いていると……」  オニキアは以前、オディリスの事を悪戯の神と言っていた。  この世界で起こっているおかしな現象の数々の原因は、オディリスの仕業であると吹き込まれていたのだろう。  では、ホッグスくんがこの物語の黒幕なのか?  いや……それでは説明がつかない。ホッグスくんは言っていた。 ――僕の知らない転生者や転移者が増えすぎている。  つまり、ホッグスくんが神であるとして異世界転生転移を行っているのならば、別の存在が介入しているという話になる。  じゃあ、やっぱりオディリスが……。  いや、でも国定さんはオディリスを信じろって以前言っていたし……。  だんだんと混乱してきた。 「どうでもいいじゃねーか。それよりさっさと行こうぜ」  元山がシンプルな回答を出した。確かにここは進むしかないか。  ホッグスくんを信じるのならば、最終決戦ラストバトルが待ち構えているのは変わりはない。 ――ブルルルルルッ!  僕は真相を聞かされ混乱していると……。 「最終装備をお忘れですぞ!! 」  上空に何かが浮かんでいた。

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