勇球必打!
ep55:鐘刃四天王前編

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 ゾンビと化した紅藤田達を倒した。  まさかこんなイベントが待ち受けているとは……。  鐘刃は何を考えているんだろうか。  それに先に入ったホッグスくんの姿も見えないでいる。 「いきなりゾンビとか何考えとるんや」 「鐘刃出て来い!」  下らないイベントに湊とドカは怒っている。  それは僕とて同じだ。  僕達は野球で横暴なる暴君との決着をつけたいと思っている。 「そういきり立つな、下級国民ども」  ……ッ!?  それは突然だった、目の前に鐘刃周その人が現れたのだ。 「鐘刃ッ!!」 「待てアラン」 ――シュッ!  ネノさんがどこからボールを取り出して投げつけた。  鐘刃の体には当たらず、そのまますり抜けていく。 「幻術か何かだ、その証拠に影がない」  よく見ると鐘刃の足元に影がない。  実体のない幻術……別のどこからかで僕達を見ているのだろう。 「ホラーアトラクションはどうだったかね?」  鐘刃は冷たく笑うとそう言った。  傲慢不遜な態度、だがそれは余裕ある態度とも言える。 「最悪のイベントや! 野球とは全く関係ないやんけ!!」  怒るマリアムに鐘刃は言った。 「フム……それもそうだね。では『野球』をろうか」  鐘刃の言葉と共に僕達は異変を感じた。  床が突然、青白く光り始めたのだ。 「何よコレ!?」 「ヘンな文字が描かれている」 「私、これアニメで見たことがあります! 『魔法陣』ですゥ!!」  MegaGirlsメンバーの一人、穂乃果が言う通りこれは魔法陣だ。  悪魔か魔物を召喚するための云わば紋様である。 「な、なんと『魔法陣』! 私の実況人生で初めて見た代物です!! エロイムエッサイムッ!!」 「こんなモノは『プロの勝負』に蜂蜜をぶちまけるが如き行為だぜ」  小前さんとブロンディさんは魔法陣から出ようとするが……。 「ダメだな、もう魔法は発動している」 「そのようだな」  国定さんとスペンシーさんは冷静だ。  流石は百戦錬磨……と言いたいところだが。 「僕達はどこへ連れて行く気だ」 ――ニヤッ……  鐘刃は口角を上げ静かに嗤った。  覚えているのはそれが最後、僕達はどこかへと召喚されていった。 ☆★☆ 「ここは……」  気付くと僕達は古びた球場にいた。 「よく来たな」  目の前には鐘刃サタンスカルズのユニフォームを着た男達がいた。  中央には褐色の肌に上半身裸、更には白い虎を模した覆面を被った男が立っている。  この覆面を被った男がキャプテンであろう。 「誰だお前は?」  西木さんの問いに覆面の男が答えた。 「俺様はダークエルフのエルパソ」  ダークエルフ……。  おそらくは鐘刃により野球を覚えた異世界の住人だろう。  その証拠に野球道具であるバットやグラブを持っている。 「鐘刃四天王『白虎』を率いるキャプテンだ」 「そのビャッコが突然何なんだ」  鳥羽さんの言葉にエルパソは左手にグラブをはめてた。 「我らと野球勝負をしてもらう!」 「いきなり何だよ! だいたい可愛いエルフのねーちゃんは出ないのか!!」  男のダークエルフにがっかりな森中さんが抗議する。  エルパソは下心満載な森中さん人間を侮蔑しながら言った。 「黙れエロ黒眼鏡」  そうするとエルパソは左手の五指をかざす。  よく見ると指輪がはめられている。 「あ、あれはミスリルの指輪や!」  マリアムが指輪の素材に気付いたようだ。  ミスリルとは異世界にある鋼よりも強い鉱物のことである。  これから何をしようというのか……。 ――グググ……ブチ……ミリ……ブチブチ……  何とミスリルの指輪は、まるで粘土細工のように千切れて地面に落ちた。  凄まじい握力だ、あの握力から繰り出される打撃や投球は脅威に違いない。 ――カチャ……チン……カチャ…… 「初めて封印を解く。この指で拳を固め存分に投げ打ち込むッ!」 「ほげっ! コイツ、超びっくりダークエルフじゃねェか!!」 「ククク……俺様達を倒さんと先へは進めんぞ?」  エルパソのデモンストレーション後に森中さんが驚く中、鳥羽さんが呆れながら言った。 「下らん。野球と何の関係がある」 「な、なんだと……言っとくが俺様はデホ様より武闘家の――」 「アラン、さっさと倒すぞ。こんな三下を相手にしているヒマはない」 ――スオオオォォォ!  鳥羽さんから超一流の武闘家のオーラが発せられる。  異世界で武闘家の修業を積んだのだろうか? 「!?」  その姿を見たエルパソ達『白虎』は自然と足を数歩後ろに後退させていた。  鳥羽さんは静かにバットを構えるとエルパソを挑発する。 「ビビっているのか?」 「くっ……人間如きが俺様に勝てると思うなよ!!」 ☆★☆ ――浪速メガデインズVS鐘刃四天王『白虎』  5回裏『11-0』でメガデインズのコールド勝ちとなった。  呆気ない幕切れにエルパソは膝をついていた。 「バ、バカな!?」 「どうした? 自慢の握力で投げ打つんじゃなかったのか」 「ウオオオオオオッ!!」  エルパソは試合に負けた悔しさもあってか、鳥羽さんの挑発に乗ってしまい襲いかかった。 ――パシッ! 「~~~ッ!?」  鳥羽さんは殴りかかるエルパソの腕を取り捩じりあげた。関節技だ。 「凄い鳥羽さん!」 「ケン〇ロウみたい」 「異世界でも武闘家グラップラーとしてやっていけますゥ」  MegaGirlsが感心する中、ギリギリと腕を捩じあげている。  関節技を極められ続け、エルパソは地面に倒れ臥せ体からは脂汗が流れていた。 「倒したぞ、次へ行くにはどうすればいいか教えろ」 「あ、あぐわっ……あ、あそこだ、あそこの魔法陣へ行け!」  エルパソの指す場所に魔法陣が出現していた。  次の場所ステージへ行くには、あそこの魔法陣に入ればいいのか。 「お疲れさん」 ――トン!  鳥羽さんはそれを聞き、エルパソの首に手刀を入れた。 「ぐっ!?」 「今一度、素振りとキャッチボールからやり直せ」  『白虎』を撃破、僕達は次のステージへと向かう。 ☆★☆ 「な、何だか暑い所だな」 「天堂オーナー、水分補給しましょう」 「暑すぎ……シャワーないの?」 「喉が渇きますゥ」  今度は赤い土が特徴の野球場へと召喚された。  この赤い土はどこかの火山地帯から採取したものであろう。  足元がやけに熱く感じる。 「ワシの名はカルバリン! 鐘刃四天王『青龍』のキャプテン!!」  目の前にはドラゴンの特徴を持つ亜人、竜人リルドラケンがいる。  彼らもまた鐘刃に野球を叩き込まれた異世界の住人だろう。 「苦しかろう愚かな人間どもよ。この暑いフィールドで貴様らのスタミナは徐々に――」 「うるせーぞトカゲ野郎!」  森中さんがサングラスをキラリと輝かせながら言った。 「湿気がある日本のクソ暑い夏に比べればマシだぜーっ!!」 「フン! 生意気なッ!! ワシの『一本足打法』で粉砕してくれる!!」 ☆★☆ ――浪速メガデインズVS鐘刃四天王『青龍』  5回裏『13-0』でメガデインズのコールド勝ちとなった。 「ワ、ワシの一本足打法が敗れたのか……人間の動きを見て研究したのに……」  熱い地面に倒れ臥せるカルバリン。  試合中のカルバリンは、4打席4三振と終始扇風機だった。 「あの打法を習得するのは難しいぞ」  試合でのカルバリンの打撃フォームを見ていた赤田さん。  無念そうな顔をするカルバリンにアドバイスをした。 「たぶん東京サイクロプスの皇選手のマネだろうが……下半身が弱すぎる」 「よ、弱すぎるだと?」 「タメが全く出来ていない。あれでは変化球にクルクルだぞ」 「マ、マネする対象を間違えた……」  意識を失うカルバリン達『青龍』。  そうすると魔法陣が現れるのであった。 「行くぞ!」  西木さんの言葉を合図に僕達は魔法陣へと向かう。  次はどんな噛ませ犬、いや強敵が現れるのだろうか。

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