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 ホッグスくんの正体は片倉さんだった。  呪符の効果で意識を失わされているのか、目は閉じられたままだ。  これから最終決戦ラストバトルであるが、まずは身の安全の確保が必要だ。 「神といえど人間と変わらなかったぞ。ちょいと隙を突いたら簡単に捕獲出来た」 「あの人を解放しろ!」  僕の要求に対し鐘刃は見下した口調で言った。 「断る。アレは『記念オブジェ』として飾らせてもらう」 「き、貴様!」  僕はバットの先端を鐘刃へと向ける。  冷酷でふざけた回答をする鐘刃に怒りを覚えたからだ。 「暴力はいかんぞ。お前も野球人ならば野球で立ち向かって来い」 「言われなくとも!」  作戦名:みんながんばろう ――応オオオオオオォォォォォ!!  僕達は自然と円陣を組み雄叫びを上げた。  その円陣にはメガデインズナインだけでなく、天堂さんやMegaGilrs達も一緒だ。 「アラン、絶対に勝つで!」  マリアムの必勝を誓う言葉だ。  僕はその言葉に対し力強く頷く。 「はい!」 ☆★☆ ――最終決戦ラストバトルシリーズ……浪速メガデインズVSBGBGsビージービージーズ  両軍のスターディングラインナップ! 【浪速メガデインズ】 1.遊 安孫子 譲 2.右 国定 造酒 3.二 D.スペンシー 4.投 碧 アラン 5.左 元山 七郎 6.一 鳥羽 修斗 7.捕 徳島 凡太 8.三 森中 亨 9.中 河合 子之吉 控え野手.なし 控え投手.湊 オニキア 【BGBGs】 1.遊 ゼルマ(アルセイス) 2.二 デホ(裏切り武闘家) 3.右 ヒロ(マスターマミー) 4.投 鐘刃 周(転生魔王) 5.一 ブルクレス(堕落した戦士) 6.三 レスナー(カイザートロル) 7.左 ベリきち(グレーターデーモン) 8.捕 アルストファー(ヴァンパイア) 9.中 フレスコム(鳥人間フレースヴェルグ) 控え野手.田中 国勝(ホブゴブリン)ガルアン(デスモンク)トルテリJr.(インプ) 控え投手.メリッサ(リザードマンクィーン)魅奈子(バンシー) ☆★☆  1回の表。  先攻はメガデインズ、一番は『殺し屋ジョー』こと安孫子さんだ。 「俺が出番ってワケかい」  口元は包帯でまだグルグル巻きだ。  鐘刃サタンスカルズとの試合で、デーモン44号にやられた傷がまだ癒えていないのであろうか。 「ほう……人間側のチームにもミイラ男マミーがいるのか」  ピッチャーマウンドに立つのは鐘刃だ。4番エースのプレイングマネージャー。  一人だけ野球のユニフォームではなく貴族服を着たままだ。  動きにくそうな服装であるが『こんな服装でも舐めプ出来る』という傲慢なる自信。  その不遜な態度、流石は魔王と言ったところか。 『始まりました日本球界の命運をかけた最終決戦ラストバトルシリーズ! 実況は私、小前樹と陰陽ガンリュウのブロンディさんのゲスト解説でお送りします!!』 『マンダム――始まったか。プロプロの闘いが』  別席では実況と解説が入っているようだ。  また天堂オーナーとマリアムを始めとするMegaGilrsは、三塁側の内野席で応援している。 「この天堂雄一は応援するぞ! 天堂家の代表として! メガデインズのオーナーとして! 野球ファンとして!」 「いてもうたれ! メガデインズ!!」 「マリアム……おっさんみたいよ」 「迷惑行為じゃなければ、どんな応援しようが自由。それが野球観戦じゃない?」 「頑張って下さぃ」  右打席に立つ安孫子さん。  オーソドックスな構えで鐘刃のボールを待つ。 (ちょいと当てただけでも内野の頭を越えるはずだ)  安孫子さんはバットを軽く握り静かに鐘刃を見据えている。  これは試合前のことだ。 「国定さん何をしているんですか?」  ベンチ内に設置しているバットケース。  その前に国定さんが各人のバットを一本づつ丁寧に触れていたのだ。 「ちょっと仕掛けをな」 「仕掛け?」 「まあ見てな」 ――ビヨックス!  仕掛けとは攻撃力を増幅させる補助魔法『ビヨックス』でバットの攻撃力を上げることだったのだ。 「こ、これは!?」 「これで木製のバットも金属バットと同じ効果が出る」 「な、何だか卑怯じゃないですか」 「これは普通の試合ではない、命と命をかけた闘いだ」 「で、でも……」 「異世界の住人相手、それも魔物どもだ。ルール内で相手を殺傷するためには、どんな裏技を繰り出してくるか分からんのだぞ」  その通りだ……誰かが傷ついてからでは遅い。  僕は国定さんの言葉に口をつぐんだ。これは正当な試合のようで正当ではない。  野球という既存の遊戯の中で、公明正大ルールの看板を掲げた中での死闘なのだ。 「そういえば……」  それと同時に僕はあることを思い出した。 「国定さんはわざと安孫子さんのバットを間違えたんですか?」  以前、国定さんは安孫子さんのバットを間違えて持っていこうとした。  あれはバットにビヨックスをかけるための行為だったのかという問いだ。 「そうだ」  明確に端的に国定さんは言った。 「異世界の住人オニキアのボールに力負けさせないためにね」  僕は少し国定さんが怖くなった。  勝つためなら、相手を倒すためなら手段を選ばないというのか。  それが例え人間であろうとも容赦のない行為……。 「私は職業クラス的には賢者だが〝賢者であって賢者ではない〟……攻撃的な本能を持つ大魔導師ハイウィザードだ」  紅藤田達との戦いでもそうだった。  伝説的な魔術師であったというのに、自らの存在をどこか否定的に見ている。 『鐘刃、第1球を投げました!』  さて試合の方だが、第一球は既に投じられている。  鐘刃の癖のない理想的なフォーム、美しいまでに洗練されているオーバースローだ。 「ストライク!」  万字さんのコールがドーム内に響く。  一球目はストレート、それもど真ん中だ。 「一球目は振らないらしいですね」 「ああ?」  キャッチャーマスクを被っているであろう男。  青白い肌、黄土色の髪を持ち、細く見える体はおおよそ捕手キャッチャーという体型には見えない。  見た目は人間のなりをしているが、凶悪な魔物『ヴァンパイア』だ。  電光掲示板の表示から、この妖魔の名前はアルストファーという名前のようだが。 「貴方達のデータは、先のブラックメガデインズや鐘刃四天王どもとの戦いで取らせてもらいました」 「ペチャクチャうるさい野郎だな。ささやき戦術ってヤツか?」 ――バシーン! 「ストライク!」 「真ん中低めのパワーカーブです。私とのおしゃべりに夢中になっていると見逃し三振しますよ」 「ちっ……」  相手のアルストファーは、何やら一人でブツブツと話しているのだろうか。  先程から安孫子さんがチラチラと後ろを気にしているような気がする。 (フフ……アルストファーの話術に翻弄されているようだな)  マウンド上の鐘刃はキャッチャーのサインを見ている。  どこかしら嘲笑っているような……。 『ツーストライクと追い込まれました。ピッチャーの鐘刃、第3球を……』 「さて、ここは定石で1球『遊び球』とやらで外したいところですね」 「ぬぅ……」 『投げた!』 ――スッ……  直球だ。  それも高めのボール球、球速的には130キロ後半台の抜いた球だろう。 ――バシーン! 「ボール!」 「高めには手を出して頂けませんでしたか」 「振るかよ」 「流石は『殺し屋』の異名を持つお方ですね。我々の世界でしたら太古にありました職業クラス『アサシン』に相応しい。冷静沈着に無感情に仕留める無機質的な――」 「詩人か小説家になったらどうだ」  バッターボックスで安孫子さんはアルストファーと会話しているようだ。  その姿を見て、西木さんと赤田さんは怪訝な顔をしている。 「いかんな」 「ヤツらのペースに巻き込まれるぞ」  ペース?  僕が西木さん達の会話を不思議に思いながらも、試合は淡々と進む。 「ところでジョーさん」 「何だよ馴れ馴れしい」 「あなたクールでニヒルなキャラを演じられておられるようですが……」 「ん?」 「昨年の関東遠征時に、何故お一人で秋葉原にいたんですか?」 「な”っ”!?」 ――バシーン! 「ストライク! バッターアウト!!」  安孫子さんは見逃し三振をした。  最後のボールはど真ん中のストレート、球筋から見てもおいしい球だった。

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