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 今、僕はこの世界の宿屋『ホテル』に来ている。  ここで、メガデインズの『新人入団発表』というイベントがあるのだ。  カメラというアイテムを持った記者、という職業クラスの人達が大勢集まっていた。 「今年からユニフォームを変更されましたね」  長方形の白いテーブルには、集まったキャラの椅子が置かれ席は埋まっている。  ちなみに僕は左隅っこ。  真ん中にはおかっぱ頭の人とちょっと陰気くさいおじさんが座っている。 「神聖的な青いユニフォームに変更しました! 地味で暗い印象とはおさらばです!!」  元気におかっぱ頭の人が言った。  白い貴族服のような豪華な服で胸にバラのブローチをつけている。  この人の名前は天堂雄一。  オーナーという偉い人で、ギルドの経営者とのことだ。  メガデインズの出資は『ハズレ』という道具屋。  マリアムの話では、この世界の『ゲーム』というアイテムを取り扱っているとのことだ。 「胸の文字はアルファベットじゃないようですが……」 「ホッホッホッ! よくぞ聞いてくれました。あえてカタカナ表記をしたのは、昭和の超人格闘野球漫画『プラネット球団』をリスペクトですよ! 選手達には超人魂で優勝! 優勝をしてもらいたいのです!!」 「ハ、ハァ……」  僕は青と白を基調とした服を着ている。それは集まった他のメンバーも同様だ。  キャップのつばや胸の『メガデインズ』という刻印はゴールドに輝いている。  見た目だけなら神聖な装備品に見える。  それにしても―――。 ――よく似合ってるやないか。 「マリアム……ちょっとマズいんじゃないか」  実は僕の後ろにマリアムがずっといる。  『ビシブルの粉』という一定時間透明化するアイテムを使用し姿を消しているのだ。  何でもオディリスの指示で僕をサポートするらしい。 ――しゃーないやろ。あんたはこの世界に来て右も左も分からん状態なんやから。 「そうは言ってもだな」 「何をブツブツ一人で言ってるんだ」 「い、いや何でもないよ」  僕の隣に入団テストで出会った黒野もいる。  彼も無事テストに合格したようだ。  それは彼だけではない、入団テストにいたメンバーの顔をチラホラ見かける。 「やるで」  僕が少し気まずくなっていると、真ん中に座っている陰気くさいおじさんが言った。  この人は監督というギルド長で、名前は福井伝兵衛でんべえ。  大阪ライガースの元監督で、数年前に優勝させた実績があるとマリアムから熱く語られた。  その手腕を買われ、去年監督に就任したが全くもってダメだったらしい。 「あの福井監督。やるでという意味は?」 「だから! やるでって言うてるやん!! 何年、記者生活やってるの!」  福井さんが記者の質問にキレてしまった。  僕も正直、福井さんが言っていることを理解出来ないでいる。 ――なるほどな。(今年は優勝目指して)やるで……と言いたいんやろうな。  マリアムが感嘆の息を漏らしているのが分かる。  後で聞いたところ、福井さんは主語と述語がよく抜けるので専任の通訳が必要とのことだ。 「え、えーっと……それでは新人選手の方々を改めて紹介していきましょう!」  司会の人が少し汗を拭って話題を変えた。  選抜順から次の通りだ。 【ドラフト】 1.山芳やまよし英郎 投手 阿西亜尼亜おせあにあ大学  大学野球界屈指の右腕。  日米大学野球の日本代表投手でもある。  6球団競合となり抽選の結果、メガデインズが交渉権を獲得するも入団拒否。  記者会見で「何で俺が外れ1位なんスか! それにザコのメガデインズはゴメンだ!!」との暴言を残す。 2.沖田元気 投手 羽巣田わすだ大学  数年前の甲子園優勝投手。  マウンド上でハンドタオルで汗を拭う所から『タオル王子』の異名で言われる。 3.徳島凡太 捕手 星訓高校  甲子園3度出場の強肩強打のスラッガー。  その体系から『ドカボン』の愛称で知られている。 4.松浦則正 投手 瑞穂国みずほのくに生命  大卒社会人の25歳。  プロの二軍との試合で好投したことがある即戦力候補。  本人は「都市対抗優勝が目標でありプロには興味がない」とのことで入団拒否。 5.河合子之吉 内野手 釈迦ヶ岳大学  近畿圏の大学野球ではそれなりに知られた選手。  シュアな打撃と堅実な守備が売り物。  オーナーの天堂と懇意にしている球団関係者の子息でコネ入りとの噂が……。 【育成ドラフト】 1.ウルフ上田 外野手 ルーガルー学園  今年新設された野球専門学校『ルーガルー学園』の出身。  新人テストでは瞬足巧打が評価されての指名となった。 2.猪俣完至 投手 鹿児島オークス  今年新設された独立球団『鹿児島オークス』の投手。  長身から繰り出されるMAX150キロの速球が魅力もコントロールが不安。 3.茂武もぶ湊 投手 府立大修高校  地方大会万年1,2回戦敗退の府立高校出身。  MAX130キロ後半の速球とそれなりのカーブとスライダーが武器。  何故指名されたか不明だが、関係者によると9回まで投げ抜く体力と伸びしろに期待されているとのこと。 4.田中国勝 捕手 道明大学  地方大学出身の捕手。地方リーグでは何度かベストナインに輝いている。  メガデインズの前に、サイクロプスとドラグナーズの入団テストを受けたが不合格となっている。  新人テストでは、守備でのキャッチングとスローイングを買われ指名された。 5.黒野秀悟 投手 娑丹高校  無名高校出身ながら、新人テストでは回転の美しい速球とコントロールを関係者から評価される。  実力は未知数であるが、今後大化けする可能性も。 6.碧アラン 外野手 クエスト硬式野球俱楽部  ご存じ主人公。  テストでは全受験生中トップの好結果を出すも、無茶苦茶なフォームと技術で見送られそうになった。  しかし、西木二軍監督の強い要望で指名される。 ――パシャパシャ  僕達はカメラというアイテムから光を浴びている。  これから野球という名の冒険の旅が始まるのだ。 「うおっ……何でこのタイミングで!」  後ろからマリアムの焦る声がした。  これからクエストが始まるのに騒がしいことだ。 「い、急いで使わんと!」 ――パシャパシャ 「なァ……今、人が見えなかったか?」 「え? 気のせいだろ」  これは後で知ったことだが、マリアムがカメラに一瞬映ったらしい。  どうやら、アイテムの効果がきれてしまったようだ。  急いでビシブルの粉を使い誤魔化したが、世間では『心霊写真』として話題になっていた。 ☆★☆ 「ふむ……勇者アランの冒険が遂にスタートか」 「それは?」 「入団会見の記事だよ。コメントじゃあ『これから皆さんに勇気と希望を与えるように頑張ります』だってさ」 「流石は勇者様って感じの回答ね」 「オニキア、君も頑張るんだよ」

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