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武器はお互い、学園自治会から支給される武器を使用する。 形状はいわゆるロングソードだが、刃が付いていない。 刀身の長さは、剣道でいう”中段の構え”を取ると、剣先が目線より少し下くらいにくる長さだ。 ……分かりづらいな。 作者のワードセンスの無さが光る一文だ。 なお服装は原則、制服とのこと。 損傷した時の補償は誰持ちになるのかが心配だが、一旦そこは目を瞑る事にする。 決闘の舞台は第四訓練場の場合、円形で 二人だけで戦うには十分すぎる広さがあった。 また、魔法による遠距離攻撃もアリのため、防御結界が展開される。 互いに剣を構え、呼吸を整える。 この後ガタイの良い男が一言『始め』と言えば、戦いの火蓋は切って落とされる。 周囲からは、ヤジが飛び交っているが、どこか遠い。 十数歩先に立つクロス君を見る。 その目には”覚悟”が揺蕩っていた。 そう、それで良い。 やっぱ戦うなら、その気概がなければいけない。 ーーー少し遡り『決闘の成立』を宣言された直後、浮かない顔をするクロス君に「クロス君、良い決闘にしよう。」と声をかけ、握手を求める。 しかし クロス君は「決闘に、良いも悪いもあるもんか。」と言って、手をはたいた。 「ハハッ、確かに。口喧嘩如きで決闘たぁ、貴族様も案外暇でいらっしゃる。」 「お前……一体誰のせいで……!」 おっと、言い過ぎた。 クロス君がズンッと歩み寄ってくる。 その手は拳。 不味いな……殴られるかも。 それに気づいた取り巻きの皆さんが、口々に「クロス様!」と呟き駆け寄り始めてる。 ここは、アイツらに止めてもらうか…… ……あ、いや、ダメだ。 今のアイツらは、決闘を取り仕切り見守る立場。 ここでアイツらに止めさせては、この決闘の正当性が疑われかねない。いや、正当性云々は今更か。 ただ、暴力沙汰後の決闘というのも、後味が悪い。 こうなったら当事者間で、うまくやらねば…… そう考えている間もクロス君は、足早に、腕を大きく振りながら、詰めてくる。 次、もう一歩近づけば、殴るためにまずは胸ぐらを掴みにかかるだろう。 そうなったら、誤魔化しきれない。 次の一歩がラストチャンスだ。 でもどうする。 声をかけるか? いや、殺意を持った相手に、声をかけて止まると思うほど、俺の脳内はお花畑じゃない。 となれば、まずは物理的な接触か。 そうするとして、何をどうする? あぁぁぁ、時間が惜しい! どうする、どうする、どうする? ……あ、そうだ! こういう時は、女神さーん!!! 「……カスタマーセンターの時間停止機能を、ポーズボタンか何かだと思ってます?」 まっさかぁ! ……“緊急回避装置”とは思ってるよ。 「あなたという人は……!」 まぁまぁ、固いこと言わないで。 トチって、変な選択して失敗したくないんだよ。 「ま、まぁ、気持ちは分からなくもないですが……」 ふぅ…… お陰でだいぶ落ち着いたよ。 うん、これなら行けそうだ。 「……え、まさかもう切ります!?」 うん、そうだけど? んじゃ、またね〜 「ちょ、嘘でs」 女神さんとの通話を切った瞬間、振り上げられかけたクロス君の右手を、反射的に掴み止める。 それから改めて「良い決闘にしよう!!!」と、今度は周囲にも聞こえる声で声をかけた。 周囲から見れば、力強い握手を交わしたように見えた。 その光景に会場がワッと盛り上がる。 その歓声に乗じて、ソッと耳打ちする 「早まんなよ。この後すぐ俺をぶちのめせる機会が来るんだ。殴るならその時にしな。」 その言葉に少し冷静になったクロス君は「ぐっ……!」と唸ると、手を振り解き暫し睨む。 その目にはしっかりと殺意がこもった“覚悟”が揺蕩っている。 これで場は整った。 防御結界が張り終わり、互いに剣を構えたところで、ガタイの良い男が野太い声で叫ぶように言う。 「これよりクロス セレティーとヒイロ ヘンドラーの決闘を行う!相手の降参か武器による有効な一撃により、勝敗を決す!ただし、互いの生命を脅かす事の無いよう留意せよ!」 いくら従者の者の声いえど、静かな怒りに身を浸し、周囲の喧騒すら意に介していない今の彼に、その言葉は届いていない。 ただひたすらに俺を殺しにかかる為の獣として、戦おうととしている。 そう、それで良い。 殺しにかかりに来い。 それでようやく、掴める未来がある。 長い長い前振りを経て、本作最初の戦いの火蓋が切って落とされた。 「それでは、始めぇ!!!」

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