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ほんの一瞬、辺りが静寂に包まれる。 うん、やっぱ有利だと思って余裕かましている奴に、内角高めのクソ話題を投げんの楽しすぎる。 心臓は大きく打ち、脳内にストレスと快楽が充満する。 弱者としての本能が、生を実感している。 一方で、再び調子を狂わされたクロス君は、「っは!悪いが私に男を抱く趣味はない。」と強気に言ってみせているが、表情は引き攣っている。 あぁ、良い。 その引き攣った表情が、俺の寿命を伸ばしてくれる。 さて、追撃でもするか。 「そう慌てなくても良いだろ?童貞じゃあるまい……」 と、言ったところで、「そこまでにしろ!」という野太い声とともに、3人の取り巻きが俺とクロス君の間に割って入ってきた。 揃いも揃って”これ以上 主人への辱めは私たちが許さん。”と言いたげな鋭い視線を向けてきている。 ……まるでこちらがイジメているようではないか。 「やだなぁ、俺は”覚悟の話”をしただけさ。それとも何かい?お宅はなんの覚悟もなく、戦線布告したって言うことかい?」 「っは。なぜクロス様ともあろう方が”負ける覚悟”をなさる必要がある?」 「そうだ。そもそも相手は虫も殺せるか怪しい、商人のせがれだ。負ける要素がどこにある。」 おいおい、取り巻きのメガネと 女が 無意識に主人のハードルを上げ始めたぞ。 「そのとおり。クロス様は“一子相伝の秘剣”を会得されている!貴様如き、容易く斬り伏せられるだろう!」 大男まで入ってきたと思ったら、今度は手の内を晒してきたぞ。 やめときなって。ほら、なんかクロス君が後ろで怪訝そうな顔してるよ? 一方、彼らの”主人自慢“に触発されたのか、今度はマインが半歩踏み出すと「そ、それなら、ヒイロ様だって、剣術を修めていらっしゃいます!魔法だって……!」と言い出したので「待て、マイン。」と言って制す。 キミまで手の内を明かさないでくれ。 そして、この間になんとか調子を取り戻したらしいクロス君が、取り巻き3人をかき分けて前に踏み出し「ともかくだ!」と言ってこの談合の締めに入った。 「私はお前如きに負ける訳が無いのだよ。多少剣を齧っているようだが、所詮は小金持ちの道楽……。訓練にもならないだろうが、せいぜい楽しませてくれよ?」 そう言い残すと、クルッと半回転し去っていった。 遠ざかるクロス君の背中に「あぁ、期待しておいてくれ。その後はたっぷり良くしてあげるよ」と告げた。 次の瞬間、クロス君は何かに躓き、転んでしまった。 大きめの石でもあったのかも知れない。 ……とは言え、俺 ノンケだし。 テクも、前世で男の娘風俗に行ってたくらいだから、あまり期待してて欲しくないね。 「あ、あの、ヒイロ様……」 「なんだい?」 「冗談……ですよね……?」 「もちろん。」 何より、読者が読みたいと思ってなさそうだしね。

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