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彼はクロス セレティ君。 100年前の大戦で武勲を上げた一家の息子で、マルクス王国の騎士団長の父のもとで育った。 だからなんだろう。正義感たっぷりの好青年で、全ての行為に悪意がない。 最近 編入してきた俺たちに対して、こうして嫌味を言ってくるのも、『この学園の品格を守りたい』という意思からきている。 オマケに文武両道で、学園内での人気も上々。 それも後押しして、生徒会入りを果たしている。 本当にいるんだね。こういう奴って。 というわけで、いろんな意味で力を持っている家の子だ。無視するわけにはいかない。 あくまで紳士的に対応しよう。 「おはようクロス君。今日も挨拶しにきてくれて嬉しいよ。」 「とんでもない。この学園に入り込んだ”異物”が、何かしでかさないようにの牽制を兼ねているからね。」 「な……!私たちはそんな……!」 「マイン、そこまで。」 抗議しようと、一歩踏み出したマインに腕で止める。 それを見たクロスは、意地の悪そうな笑みを浮かべた。 「従者が勝手な行動をするとは、教育がなってないじゃないか?」 「いや、彼女は俺の代弁を、しようとしてくれただけだよ。」 「ほう、では何を言おうとしていたのかな?」 「え、言っていいの?」 「あぁ、構わない。何でも言うと良い。僕の心は広いからね。」 「お、良いねぇ。では、言わせてもらうよ。」 今後のことを考えれば、言いたい事を言うのは止めておくべきだ。 だが、マインの気持ちを無下にはしたくなかった。 俺は大きく息を吸い込むと、マインが言いたかったであろう言葉を一気に言い放った。 「うるせぇ、クソダサ真ん中分け野郎。コッチは正当な手順を踏んで、ここに入ったんだ。テメェに異物だか何だか、言われる筋合いわねぇ。文句があるなら、教師陣にでも言ってこいや、このヘタレ。そもそも大した実力もねぇクセに、親の威光のおかげで取り巻きを形成している、その態度が気にくわねぇ。俺たちに嫌味言ってる暇があるなら、もっと自分を磨いてこいよ、バカが。」 ……ふぅ、言った言った♪ 心なしかスリースタイルラップみたいになったけど、『言いたいことを言える』ってのは気持ちがいいものだね。 ……ってあれ。周りからドン引きの空気を感じる。 あぁ、思い返せば。マインの言いたかった事以外のことも、勢い余って言った気がする。 だって、後ろからマインが「ヒイロ、流石にそこまで、思ってないよ……!」って小声で抗議してるもん。 ついでに、さっきのセリフ。 スマホで読むには、めちゃくちゃ読みづらい文章になった気もする。 ……とにかくなんとか、リカバリしなければ。 「あぁ……ごめん。俺の故郷では『喧嘩する時は”ラップバトル”で決着をつけろ』っていう教えがあって……」 ちょっと苦しい言い訳になったが、どうだ……?

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