ムサシを引き連れ、自室へやってきた。 「どうぞ」 「お邪魔する」 六畳の和室をDIYにて洋室化した自室だ。高校生の部屋としては、結構なクオリティだと自負している。 「あ、そこ座って」 粗大ゴミとして捨てられていた二脚のシングルソファを修理して、リプロダクトした自慢の家具。DIYは俺の趣味である。 ムサシは部屋の中を見渡すも、一切動じず至って普通だ。ま、俺は基本的にミニマリストであるがゆえ、部屋に置かれているのは、中央のソファ二脚とテーブル、そして、勉強机とベッドしかないから、驚く事もないだろうけど。 「さてと……」 俺もソファに腰掛け、ムサシと対面となった。う~ん、初めて自室に招き入れた女の子が、世界一有名な剣豪が女体化した女子とは、ある意味、世界一贅沢な事をしているのかも知れない。 しかし、チョコンとソファに座るその姿は、フィギュアと見間違う程愛くるしい。身長140センチ台の女の子に、ちょっと危険なモノを感じてしまう。特殊中の特殊なケースとは言え、身元不明の少女を家に連れて来ちゃったんだ。多少の背徳感は否めない。 「これが拓海殿の部屋でござるか。風情がありますな」 風情? そんなもんあるか? 今ここにあるのは俺の煩悩だけだよ! って、いかんいかん。本来の目的を見失ってしまう所だった。 「実はさ、本よりももっと便利なモノがあるんだ」 「書物よりもでござるか?」 テーブルの中央に置いてあるモノを手に取り見せた。 「これはタブレット端末といって、色々な情報を知る事が出来るんだ」 「こんな四角の板が?」 「うん、とりあえず操作方法を教えるからさ」 タッチ、フリック、スワイプ動作と、検索エンジンの使用方法をレクチャーした。 「なるほど。操作手順は心得たでござる」 「これなら短期間で歴史の事が解るし、飽きたらゲームとかも出来るからさ」 ムサシは感慨深い表情でタブレット端末を見つめた。 「四百年……四百年後の日本は、まるでお伽噺。拙者はとても貴重な経験をしているのですな」 部屋をノックして母さんが入室してきた。 「あらあら、どこへ行ったのかと思ったら、拓海くん意外と手が早いのね。ウフフフ」 「いやいや、タブレットの使い方を教えてただけだよ」 息子の情事が気になるのだろうか? うん、そんな母さんも可愛いよ。 「じゃあ、部屋にタブレット持っていっていいからさ」 「かたじけない。学ばせて頂く」 ムサシは母さんの案内で隣の部屋へ移動していった。
コメントはまだありません