ライバルに敗れた悔しさと我が家の借金に押し潰されそうになっていたアリス。 友人のロップのおかげで進むべき道を見つけ、彼女は大食いの猛者が集う大会『食戦鬼GP』に参戦したのであった。 「ここが食戦鬼GPの会場……。 強そうな人がいっぱい……」 巨大なドームに集合している選手たち。初めて大食いの大会にエントリーしたアリス。勝負事に慣れていないアリスは、大会の物々しい雰囲気に押し潰されそうになっていた。 「大丈夫……! あたしが付いてるっ!」 震えるアリスの手を優しくて両手で握るロップ。その感触と温もりに、アリスの心は自然とほぐれていた。 「ありがとうロップちゃん……」 「ハッ! お友達が同伴とは、 随分と大会をバカにした 奴がいたもんだねぇ!」 「ひえっ……。 あ、あのぅ……」 アリスとロップのやり取りを見ていたカバの獣人の女性。大きな身体をさらに大きく見せるように仰け反らせ、アリスを威圧していた。 「なんなのよあんた! アリスをいじめんなっ!」 「お友達にカバわれるなんて 弱っちい奴だねぇ」 アリスの前に身を乗り出し、カバの女性を睨むロップ。女性は気にも留めない様子で、ニヤニヤしながらアリスを見下していた。 「カバンに荷物をまとめて 逃げるなら今のウチさ! カーバッハッハッハ!」 女性は豪快に笑うと、満足そうにアリスたちの元から立ち去った。 「バカにしやがってぇ! あんなの気にしちゃ駄目よ! あたしはずっと観客席から 応援してるからねっ!」 「う、うん……!」 「これより! 食戦鬼GPの予選を開始いたします! 選手の皆様は予選会場まで お越しください!」 大会のアナウンスが、会場に設置されているスピーカーから響いた。 「い、行かなきゃ……!」 「頑張って! アリスなら 絶対、全員圧勝出来るから!」 不安なアリスは苦笑いを浮かべながら、ロップの応援を心の支えに会場へと向かった。 ドームから離れた広大な広場。ゴルフコースとして運用出来そうなその広場に、予選に参加する選手が集った。 (ルビーちゃんは どこにいるんだろ……。 まさか参加してない なんてことないよね……) ルビーのことを探すアリス。だが、彼女の姿は確認出来なかった。そんなアリスを他所に、予選のルール説明が広場に設置されているスピーカーから流れ始める。 「予選はおにぎり争奪戦です! この広場に隠されている おにぎりから決勝トーナメントの 参加券を探し出した選手が 予選突破となります!」 「なんだそりゃ! 楽勝じゃねぇかッ!」 「おっ! あそこに おにぎりがあったぞ! 俺が決勝に行くんだ!」 説明を聞くやいなや、竹の皮に包まれたおにぎりを見つける男たち。さっそく参加券を取り出すためおにぎりにかじり付いた。 「うおわああああああッ!?」 男たちがかじったおにぎりが突如爆発した! 爆風に吹き飛ばされ、男たちは遥か彼方へと吹っ飛んでいた……。 「参加券入りのおにぎり以外は 爆弾おにぎりになっております! お気を付けください!」 「先に言えっていうか、 爆弾なんか入れるな!!」 大食い大会の予選で、食べられることなく爆発するおにぎり。巨大モニターに映し出されるカオスな光景に、ロップは観客席から突っ込まざるを得なかった。
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