大喰いリスっ娘の爆食道
第5食 回転寿司デスマッチ

作品に栞をはさむには、
ログイン または 会員登録 をする必要があります。

 回転寿司店のカウンター席に座るアリスとルビー。2人の前では、ベルトコンベアーがゆっくりと寿司を運んでいる。 「勝敗はシンプル。  食べたお皿が多い方が勝ち  覚悟は良いかしら?」 「おっけー!  わーい! お寿司だ!」  無邪気に喜ぶアリス。寿司を乗せた皿を取ろうとした時であった。 「加速!」  ルビーの世話係スティーブが、カウンター裏の謎のスイッチを押した。すると、ベルトコンベアーの回転速度が上昇し、寿司はアリスの手を掠めて流れてしまった。そのまま隣に座っていたルビーが皿を手に取った。 「ふん……」 「あぁっ! 私の玉子が!」 「回転寿司に必要なのは、  お皿を取る反応速度と  新鮮さを見極める洞察力」 「その程度では  話にならないわね」 「ぐぬぬ……!」  玉子を取られ悔しがるアリス。次こそはと皿をロックオンする。 「よし、取った!」  赤身が輝くマグロを取ったアリス。愛おしそうに見つめながら、颯爽と口の中へと放り込む。 「むぐむぐ! 美味いっ!  力強いマグロの生命力を  感じさせるしっかりとした  味わい……。私にも命が  流れ込んでくるような……」  美味しそうに味わうアリス。だが、そんなアリスの動きが止まった。 「アリス? どうしたの?」  心配そうに顔を覗くアリスの友人ロップ。アリスの身体は小刻みに震えていた。 「ひぎゃあああっ!  痺れるぅ〜ッ!!」  マグロとシャリの間に乗せられていたワサビ。そのワサビが電撃のような辛味を発し、アリスは悶絶していた。 「電撃のような辛味を持つ  希少な電撃ワサビです。  本物の電流のように痺れるので  一般には流通しておりませんが」  涼しい顔で説明する板前姿のスティーブ。そんなことを言いながらその手でワサビをシャリに乗せ、今まさに電撃ワサビ入りの寿司を握っていた。 「そんなもん入れんな!?  アリス! 大丈夫!?」  感電して床の上に倒れているアリス。ルビーはというと、ワサビが入れられるネタを避け、玉子ばかり手に取っていた。 「 あっ! 電撃ワサビの  ことを知っていたから、  ワサビの入っていない  ネタを選んでいたのね!?  この卑怯者っ!!」 「違う……」 「私は元々ワサビが  食べられないの。  だって辛いもん……」 「そんな急に子供みたいに!」  ルビーの不正を疑うロップだったが、ルビーは元々ワサビが苦手なだけであった。玉子ばかりをひたすら食べ続け、ルビーはどんどん皿の数を増やしていく。 「あっ! ズルいそんなに食べて!  私ももっと食べないとっ!」  ワサビの電撃から復活したアリス。今度はワサビの入ったネタを避ける……かと思われたが。 「えっ!? アリス  あんたまたマグロ  取っちゃってるわよ!?」 (さっきあんなに痺れて  嫌な思いをした物をまた!?)  続けて電撃ワサビ入りのマグロに挑むアリス。信じられない行動に、ロップとルビーは目を丸くしていた。 「うびびびーっ!  鋭い辛味が本当に電撃のように  舌の上を刺激するぅ〜!」 「でも! 美味いっ!」 「な、なんですって……」  電撃ワサビを何事もなかったかのように味わうアリス。わざわざリスクを侵すアリスの姿に、ルビーは打ち震えていた。 「お、お嬢様……!」  ルビーもマグロを手に取る。そして、しばらく赤身を見つめた後、意を決して思いっきり頬張った。 「ひゃぎいいいいっ!?」  電撃のような辛味に悶絶するルビー。スティーブはあまりの光景にショックで固まっている。 「はぁ……はぁ……。  た、確かに美味しいわ……!  この刺激が癖になる……!」  ワサビを克服したルビー。それを見ていたアリスは嬉しそうに微笑んでいた。

応援コメント
0 / 500

コメントはまだありません