回転寿司店のカウンター席に座るアリスとルビー。2人の前では、ベルトコンベアーがゆっくりと寿司を運んでいる。 「勝敗はシンプル。 食べたお皿が多い方が勝ち 覚悟は良いかしら?」 「おっけー! わーい! お寿司だ!」 無邪気に喜ぶアリス。寿司を乗せた皿を取ろうとした時であった。 「加速!」 ルビーの世話係スティーブが、カウンター裏の謎のスイッチを押した。すると、ベルトコンベアーの回転速度が上昇し、寿司はアリスの手を掠めて流れてしまった。そのまま隣に座っていたルビーが皿を手に取った。 「ふん……」 「あぁっ! 私の玉子が!」 「回転寿司に必要なのは、 お皿を取る反応速度と 新鮮さを見極める洞察力」 「その程度では 話にならないわね」 「ぐぬぬ……!」 玉子を取られ悔しがるアリス。次こそはと皿をロックオンする。 「よし、取った!」 赤身が輝くマグロを取ったアリス。愛おしそうに見つめながら、颯爽と口の中へと放り込む。 「むぐむぐ! 美味いっ! 力強いマグロの生命力を 感じさせるしっかりとした 味わい……。私にも命が 流れ込んでくるような……」 美味しそうに味わうアリス。だが、そんなアリスの動きが止まった。 「アリス? どうしたの?」 心配そうに顔を覗くアリスの友人ロップ。アリスの身体は小刻みに震えていた。 「ひぎゃあああっ! 痺れるぅ〜ッ!!」 マグロとシャリの間に乗せられていたワサビ。そのワサビが電撃のような辛味を発し、アリスは悶絶していた。 「電撃のような辛味を持つ 希少な電撃ワサビです。 本物の電流のように痺れるので 一般には流通しておりませんが」 涼しい顔で説明する板前姿のスティーブ。そんなことを言いながらその手でワサビをシャリに乗せ、今まさに電撃ワサビ入りの寿司を握っていた。 「そんなもん入れんな!? アリス! 大丈夫!?」 感電して床の上に倒れているアリス。ルビーはというと、ワサビが入れられるネタを避け、玉子ばかり手に取っていた。 「 あっ! 電撃ワサビの ことを知っていたから、 ワサビの入っていない ネタを選んでいたのね!? この卑怯者っ!!」 「違う……」 「私は元々ワサビが 食べられないの。 だって辛いもん……」 「そんな急に子供みたいに!」 ルビーの不正を疑うロップだったが、ルビーは元々ワサビが苦手なだけであった。玉子ばかりをひたすら食べ続け、ルビーはどんどん皿の数を増やしていく。 「あっ! ズルいそんなに食べて! 私ももっと食べないとっ!」 ワサビの電撃から復活したアリス。今度はワサビの入ったネタを避ける……かと思われたが。 「えっ!? アリス あんたまたマグロ 取っちゃってるわよ!?」 (さっきあんなに痺れて 嫌な思いをした物をまた!?) 続けて電撃ワサビ入りのマグロに挑むアリス。信じられない行動に、ロップとルビーは目を丸くしていた。 「うびびびーっ! 鋭い辛味が本当に電撃のように 舌の上を刺激するぅ〜!」 「でも! 美味いっ!」 「な、なんですって……」 電撃ワサビを何事もなかったかのように味わうアリス。わざわざリスクを侵すアリスの姿に、ルビーは打ち震えていた。 「お、お嬢様……!」 ルビーもマグロを手に取る。そして、しばらく赤身を見つめた後、意を決して思いっきり頬張った。 「ひゃぎいいいいっ!?」 電撃のような辛味に悶絶するルビー。スティーブはあまりの光景にショックで固まっている。 「はぁ……はぁ……。 た、確かに美味しいわ……! この刺激が癖になる……!」 ワサビを克服したルビー。それを見ていたアリスは嬉しそうに微笑んでいた。
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