大喰いリスっ娘の爆食道
第6食 ネタが尽きるまで

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 回転寿司で大食い勝負をするアリスとルビー。お互い難関の電撃ワサビを辛くも克服していた。 「まだまだいろんなネタがある!  こんなところで休んでられないよ」  次々と流れる多種多様な寿司。次に手に取った物はいなり寿司だった。 「いただきまーすっ!」  アリスがいなり寿司を食べようとした時、リスの獣人自慢の前歯が弾かれていた。 「かったーいッ!!」  いなり寿司の周囲には妖力でバリアが張られていた! アリスから逃亡したいなり寿司は、浮遊して逃げ回っている……。 「いなり寿司の  油揚げには妖狐の力が  込められております。  妖術を発しますので  お気を付けください。」 「なんで普通に食える物  出さないの!?」 「大食いバトルとは  その名の通り戦い。  戦いを制した者こそ  勝者となるのよ」  突っ込みを入れるロップに勝負について語るルビーは、水流を巻き上げながら襲い掛かるかっぱ巻きと戦っていた……。 「かっぱ巻きには  河童の力が込められて  おりますのでお気を付け……」 「妖怪の力を込めるなって!!」  寿司から発せられる妖術を身軽に回避するアリスとルビー。寿司の攻撃が止んだタイミングで一気に攻め込む! 「おいなりさん!」 「かっぱ巻き……!」 「大人しく食べられなさい!!」  アリスは稲荷のバリアを前歯の全力で食い破り、ルビーはかっぱ巻きを犬の遠吠えで鎮圧させていた。 「さすが激流ラーメンを  攻略した者……。  この私に肉薄するとは」 「どのお寿司も美味しい!  ルビーちゃん!  ご馳走してくれて  本当にありがとう!」 (こ、この子……。  食事を楽しむことしか  考えていないの……?)  ライバル心を剥き出しにするルビーに対し、アリスは常にマイペースで、純粋に回転寿司を満喫していた。 「次は甘エビ!」  甘エビは海苔で括り付けられたシャリごと高速で飛び跳ね逃げ回っている! アリスはリスの俊敏な動きで甘エビを先回りして仕留めた。 「大トロ。覚悟しなさい」  あまりの高級感に神々しく輝く大トロ。凄まじいオーラでルビーを押し潰そうとするが、お嬢様のルビーはそれを難なく耐え、大トロはルビーにあっさりと食べられた。 「2人とも凄い……。  よく分からんけど……」  アリスとルビーのお皿が山のように積み上げられ、2人の戦いの壮絶さを物語っていた。ロップは別次元の戦いを、たまに突っ込みを入れながら眺めるしかなかった。 「アリス。貴女は  私が倒す……!!」 「どれも美味しいね!  ルビーちゃんっ!」  2人の戦いは最高潮に達していた……! 「あ。申し訳ございません。  ルビーお嬢様……」 「どうしたのスティーブ」 「ネタが底を付きました……」 「な、なんですって……」  まだまだやる気満々のルビー。だが、寿司の方が先に限界を迎えてしまった。 「仕方ない……。  お皿の数を数えなさい」  スティーブがアリスとルビーの皿を数える。ルビーは固唾を呑んで数え終わるのを待つ。 「ルビーお嬢様300皿。  アリス様299皿」 「よって、  ルビーお嬢様の  勝利ですッ!!」 「ふぅ……」 「そんな……アリスが  負けちゃった……」  辛くも勝利を収めたルビー。アリスの前に立ち、アリスが敗者であることを突き付ける。 「貴女は食欲に忠実で、  食事を心から楽しんでいた。  私はその姿勢を評価する」 「だけど負けは負け。  貴方が負け犬であることに  変わりはないのよ」 「ルビーちゃん……私……」 「……負け犬のまま  終わりたくなければ、  強くなることね……」  ルビーは踵を返すと、そのまま回転寿司店から立ち去っていった。スティーブはアリスとロップに会釈をして、同じく店を出た。 「なんなのあいつ……!  アリスはただお寿司  食べてただけなんだから!  ねっ! アリス?」  勝負を気にせず食事を楽しんでいたアリス。当然勝敗のことなど気にしていないとロップは思っていた。 「うっ……うぐっ……!」 「ちょっ!? ちょっと!!  アリスなんで泣いてんの!?」 「わ……分かんない……!  分かんないよぉ……!!  うぅっ! うあああああん!!」  終始楽しんでいたはずのアリスが突然泣き出し困惑するロップ。なんとかなだめようとするが、タガが外れたように涙が止まらなかった。  一方。スティーブの運転するリムジンの後部座席に乗り、佇むルビー。その顔は少し微笑んでいた。 「良いライバルが見つかりましたな」 「……別に」  そうは言いつつも嬉しそうなルビー。リムジンは大きな庭園のある和風の屋敷の前で停まった。 「お嬢! おかえりなさい!」  ルビーを出迎えるスーツ姿でサングラスの厳つい男たち。ルビーはそんな光景に慣れた様子で、男たちの前を静かに通り過ぎる。  その中には、アリスの家に、借金の取り立てに現れたサングラスの男たちの姿があった……。

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