犠牲者達の鎮魂歌
斎場
火葬場の近くに小さな会館を見つけた俺は、その中に入った。 そのすぐ正面の受付カウンターに立っている女に、俺は声をかけた。 「すんません、棺用意してくれます?」 「……貴方は?」 女に怪訝そうに聞かれて、俺ははっとした。そして笑って応えた。 「私は、本日よりここで務めることになった、火葬技師の相沢と申します」 「お待ちしておりました、どうぞこちらへ」 女はそう言うと、小さな待合室の様なところに俺を案内した。 「彼らを棺に入れますので、暫しお待ちください」 「あぁ、はい」 俺は部屋の中の椅子にすわりながら、あぁ、彼らも獣なのだ。と思った。 暫くして、女は戻ってきた。 「お待たせしました。どうぞ」 今日ほど、火葬した人数が多かった日はなかっただろう。 「明日も多そうだな」 と思いながら煙を見ると、一人の男がやって来た。格好からして僧侶だ。 「あの……経だけあげてもよろしいですか?」 「ありがとうございます」 俺は笑って彼を迎え入れた。彼のすぐ近くにいた熊のような獣人間は、静かに俺を睨んでいた。 「大丈夫ですよ源雲」 源雲と呼ばれた男は、無言で頷くと俺に一礼した。 「すみません、怖がらせてしまいましたね」 「あっ、いえ……」 正直かなりビビったが、悪気があるわけじゃなさそうな為、返事だけした。 明日も経をあげるためここに来ることを告げると、二人は去っていった。 二人はどこから来たのか。今までどうしていたのか等気になることは後から後から溢れてきたが、今度聞くことにして、俺は帰宅して眠った。
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