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スマホのアラームで目を覚ます。 今回はちゃんと別れの挨拶をして落ちることができて良かった。 たっぷりたまった通話アプリの通知に、クラスのグループを見れば、夜中の2時頃グループに坂口くんが冬馬くんを呼んでいた。 なんでまたこんな深夜に……。 坂口くん、夜寝てないのかな。 ちゃんと寝ないと病気治らないんじゃないのかなぁ……? 冬馬くんも心配してるだろうに……。と、私は勝手に冬馬くんの心配をしたりしながら、学校へ向かった。 ズッ友グループの方は、皆でお笑い番組を見ていたらしく、アイカとひまりと遥のやりとりがずらっと並んでいた。 玲菜は途中まで一緒に見ていたようだったけれど、途中から『音楽番組見るから』と消えている。 多分、アイドル好きのひまりもそっちが見たかったんじゃないかなと思うんだけど、何も言わずにそのままお笑い番組を見てるようだった。 いや、もしかしたら2画面にして見てたのかも知れないけど。 どちらにせよ、録画してあるのは間違い無いだろうな。 もしかしたら、玲菜と一対一会話では盛り上がってたのかも知れない。 そんなふうに思えば思うほど、通話アプリでの彼女達の会話は、酷く薄っぺらに見えた。 今日も、学校に坂口くんは来なかった。 私は、ちょっと理科の実験で火傷しそうになってヒヤッとしたけど、そのくらいで、今日もいつもと変わらない時間に、学校から戻る。 いつものようにスマホを開く。 クラスのグループに表示された文字に、私は目を疑った。 『ひまりが冬馬叶多を退会させました』 『ひまりがグッチーを退会させました』 グッチーというのは、坂口くんのことだ。 え……!? なんで……。どうして……?? 二人とも、何も発言していなかったのに。 ……そんなに、戻ってきたのが許せなかったんだろうか。 「酷い……」 思わず、口から呟きが零れると、カタナの声が胸を過ぎった。 そうだ。想像力……。 どうして、何も言わないのに蹴ったんだろう。 何かを言われる前に……、何かって……もしかして、文句を言われたくなかったのかな。 文句を言われるのが怖くて、二人が何か言う前に蹴った……?? それにしたって、酷いけど。と思いながらも、ひまりの態度にひまりの弱さを見つけて、ほんの少しだけ怒りが和らぐのを感じる。 なんだか不思議だ。 現実は何も変わってないのに、考え方だけで、人の気持ちは変わるものなんだね。 でも、冬馬くんと坂口くんはどう思ったかなぁ……。 嫌な気分になったのは間違いないだろうけど。 冬馬くんは、坂口くんが蹴られたことに心を痛めてるかも知れないな……。 ん? でもこの順番で蹴られたなら、坂口くんが蹴られた事を冬馬くんに言わない限りは、冬馬くんは自分だけ蹴られたと思ってる……かなぁ。 坂口くん、よく学校休んでるし、性格まではわからないんだけど、細い銀色のフレームの、大きめの眼鏡をかけた、ほんわかした感じの男の子だったよね。 もうずっと休んでるけど……、まさか、コロナなのかなぁ。 ズッ友グループにも通知が入る。 『ちょっと、ひまり蹴り過ぎウケるwww』 『二人まとめて蹴っとけば、もう戻って来ないっしょ』 『えへん(←スタンプ)』 アイカの突っ込みにも、ひまりは悪びれる様子がない。 『えへんじゃないでしょ、坂口まで蹴ってどうすんの?』 『テヘッ(←スタンプ)』 玲菜が窘めてくれてるけど、ひまりは反省する気はないみたいだった。 『そんなことばっかりしてたら、友達無くすよ』 『ひどーいっ(←スタンプ)』 『うるうる(←スタンプ)』 でも、スタンプの返信ばっかりなのは、もしかしたら本人も、ちょっと罪悪感を感じてるのかも知れないなぁ……。 そんな風に想像力を働かせていたら、遥も帰ってきたらしい。 『ただいまー』というスタンプに、おかえりが続く。 私もそろそろ見ているだけではまずいので、ただいまとおかえりに混ざっておいた。 アイカが、3人の招待でもらえたというDtD衣装のスクショを上げてくる。 あ……。可愛い……。 こんなメイドさんみたいな衣装セットがあるんだ。 一見メイドカフェの服みたいなふりふりのエプロンドレスなんだけど、所々ファンタジーテイストになってるのが、DtDっぽくていいなぁ。 他のみんなも私と同じで『可愛いっ!』とスタンプを送っている。 うーん。3人招待かぁ……。 お父さんとお母さんには、頼めば引き受けてもらえるかも知れないけど、もうあと1人足りないなぁ。こんな時、兄弟がいればいいのになと思ってしまう。 去年同じクラスだった友達に頼めばやってくれるんだろうけど、普段遊んでない子にこんな時だけ頼るのも、またどうかなと思うし……。 私以外の2人も、この衣装が欲しくなったのか、なんとか3人にならないかと計算しているようだった。 『みんなDtD続けてるんだ?』 アイカの問いにひまりが答える。 『続けてるっていうかさー、一昨日インストして、昨日ちょっと遊んだだけっしょ』 そうだよね。まだ今日で3日目だもん。 私は、夢での事が残ってるかどうか朝から一度ログインしてみたけど、前と同じで私のレベルはちゃんと25になっていた。 『レベルは?』 アイカの問いに遥とひまりが答える。 『12だったはずー』 『14だよー。へへー、私の方が上だねっ』 『みさみさは?』 問われて、一瞬迷う。でもこれは嘘をついたってゲーム内で会えばバレてしまうわけだし……。 パーティーを組めば相手のレベルが分かるのを、私はもう知っていた。 『25……に、なったとこ……』 『ええーっ!? みさみさなんでそんなにレベル高いのぉ? うち22なんだけど!?』 『あはは……(←スタンプ)』 あー……。アイカのレベル超えちゃってたか……。ちょっと気まずいな。 『私の方が一週間も前からやってるのにーっ』 『たまたま親切な人がレベル上げ手伝ってくれたんだよ』 『えー、いいなー』 『それって、仲良くなって、君どこに住んでんのー? とか聞かれるやつでしょー?』 『ヒョェェェェ(←スタンプ)』 『キモッッ(←スタンプ)』 『みさき、騙されやすそーだよねー』 『気を付けなよぉぉぉ!!』 どうして良く知らない人の事をそんな風に言えちゃうのかな。 知らないからこそ、言えるのかな。 確かにそういう人はいるのかも知れないけど、カタナはそんな人じゃないと思う。 『アイテム貸してくれたり、壁してくれたり、いい人だったよ。矢も買ってくれたし……』 リボンの事は、流石に貰いすぎな気がして、言えなかった。 『ええー、いいなぁー。紹介してっっ!!』 アイカの言葉にぎくりとなる。 紹介したら……、どうなるんだろう。 カタナはアイカにも、ひまりにも遥にも、私にしてくれたみたいに優しく色々教えてくれるんだろうな……。 『その人とはフレンド登録しなかったから』 『ごめーん(←スタンプ)』 『残念無念(←スタンプ)』 私は、思わず嘘をついてしまっていた……。 カタナならきっと、DtDのプレイヤーが増えるのを喜んだんだろうに……。 『じゃあさー、今日は4人でDtDする?』 『いいねー(←スタンプ)』 『賛成ー(←スタンプ)』 『わーいっ(←スタンプ)』 嬉しそうな笑顔のスタンプを、私は小さなため息と一緒に押した。 ログインすれば、パーティーチャットでカタナから声がかかる。 今日はここに行こう。とまた私の行ったことのないワールドを挙げられる。 一緒に行きたいなぁ……。そう思いながらも、私はそれを断る。 『ごめん、今日は友達と遊ぶ事になっちゃって……。せっかく声かけてくれたのに、ごめんね……』 『約束をしていたわけでもなし、気にする事はない。何か困った時にはいつでも個別メッセージを送ってくれ』 そう言うと、カタナはパーティーの抜け方を説明してくれた。 カタナと一緒のパーティーを抜けるのはなんだか酷く残念な気分だった。

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