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カタナと一緒に、Eサーバーのワールドセレクトルームに現れたのは、明るいピンクのツインテールの、可愛い女の子だった。 「はじめまして、みさみさちゃんっ、話はカタナから聞いてるよーっ♪♪」 えっ、女の子!? 私はてっきり、カタナが連れてくるのは男友達なんだと思ってて、予想外の事態にしばし固まる。 「みさみさ、ウィザードのあゆゆだ。俺と一緒で呼び捨てにしてくれたらいい」 「あゆって呼んでくれたらいいよーっ。これからよろしくねっ!」  「あ、はい。よろしくお願いします……」 「あはは、敬語いらないよー」 あゆゆさん、じゃなくてえっと、あゆは、黒いウサミミをつけてて、パステルピンクの髪には、大きなフリフリのピンクのリポンがついている。 背中には黒い鳥の羽のようなものがパタパタしていて 黒猫のような長い尻尾にも金の鈴がついたピンクのリボンを結んでいた。 「か、可愛い……」 どこから見ても、誰が見ても、文句なく可愛い女の子だ。 思わずこぼしてしまった言葉に、あゆは水色の瞳を細めてにっこり笑う。 「ありがとー♪♪」 「お前は、相変わらずのキメラっぷりだな」 苦笑するようなカタナの言葉。 言われてみれば、確かに、耳も尻尾も羽も別の生き物だよね。 「可愛いからいーのっ」 と答えて、あゆはぷぅと小さくほっぺをふくらませる。 うーん。仕草も可愛い……。 「カタナも可愛いの大好きでしょー?」 カタナはあゆに肩へ寄りかかられて、視線を逸らして言った。 「余計な事を言わなくていい」 あ。照れてる。珍しい。 仲良いんだなぁ……。 カタナと私のパーティーに、あゆが加わる。 「でもほんと、カタナの姿見るのも久しぶりだねー。あれ? レベル1つしか上がってない?」 ……あ、それは、きっと、私の面倒ばかり見てたからだ……。 私は、その事実を申し訳なく思う。 「お前は上がりすぎだろう」 カタナの言葉に見てみれば、あゆのレベルは78だった。 「夜中は廃人さんが多いんだよねー。あちこち連れてってもらっちゃった♪」 「……そうか……、……よかったな」 カタナはどこか、ほんの少し苦しげに言った。 「うんっ」 あゆは、そんなカタナを励ますかのように、明るく頷いた。 「じゃあ早速、お菓子のワールド入ろー♪♪」 ぴょぴょんと嬉しそうにスキップをして、あゆが言う。 そっか、お菓子のワールド。ついに入れるんだよねっ。 私もドキドキしてきた。 「みさみさちゃん、お菓子のワールド入るの初めてなんでしょ?」 ピンクの髪をさらりと揺らしてあゆが私を覗き込む。 水色の瞳がピンクの髪に合わさると、すごく可愛い。 「う、うん」 「今日はいっぱい楽しもうねっ♪」 にっこり微笑まれて、私の心が弾む。 「うんっ」 そうして、私たちは三人、念願のお菓子のワールドに入った。 じゃりっとしたザラメの地面。空に浮いてるのは綿菓子なのかな? 花や木や草も全部お菓子だ。 緑の飴やグミの葉っぱの間から、可愛い棒付きキャンディが生えてる。 「うわぁー」 可愛くて、美味しそうで、ときめく。 スマホの画面越しからも甘い匂いが漂ってきそうだった。 「みさみさちゃんっ、チョコの村と、ゼリーの村と、飴の村、どこから行きたい?」 あゆがくるりと回って振り返る。 「え? えーと……」 「最初はゼリー……、いや、みさみさは弓だから硬いチョコか飴の方がダメージが出やすいか」 カタナが考えてくれてる。 「わ、私はどこでも……」 あゆが遠くを指さした。 「ほら向こう、見える? この国の真ん中に建ってるのが、ケーキのお城だよー」 「わあ……」 チョコレートと、ホイップクリームに包まれて、キラキラした粒々で飾られたお城が見える。 「村はモンスターの出るマップなんだけど、お城は町マップだから、お菓子の国限定のアクセとか、可愛い回復アイテム買って帰ろうねっ♪♪」 言われて、ああ、女の子と遊ぶのもいいなと思ってしまった。 ここだけの限定アイテムのお買い物とか、心ときめいてしまう。 「う、うんっ。お買い物したいっ!」 私の答えに、あゆは満足そうににっこり笑うと、その先に駆け出した。 あゆがアイテム欄から、ヒョイと空き瓶を取り出す。 「みさみさちゃんっ、このジュースが流れてる川、空き瓶でジュース汲めるんだよーっ」 言って、あゆが空き瓶をポイと投げてくれる。 汲んでみていいのかな。 空き瓶をオレンジ色したジュースの川に入れると、アイテム精製のエフェクトとともに、空き瓶からオレンジジュースに変わった。 「オレンジジュースになった!」 初めてのアイテム精製。エフェクトも新鮮で、なんだか楽しい。 「もっとやる?」と尋ねるあゆに、思わずコクコク頷くと、30本の空き瓶が渡された。 あゆも、私に付き合ってくれてるのか、隣で1本2本と汲んでいる。 「懐かしいなー、ボクもレベル30代の頃よく汲みに来てたよー」 あれ、意外というかなんというか。 あゆはボクっ子なんだね。 「回復量はミニポーションと同じくらいだが、まだ今のレベルなら実戦でも使えるだろうな」 カタナもそう言うと川岸に来る。 「手伝おう」 「えっ、その……」 「はい、カタナの分っ」 あゆがポイと瓶を投げる。 そうして、ワイワイ喋りながら、結局三人で合わせて120本ものオレンジジュースを汲んでしまった。 「これ、実際やったら腰が痛くなる作業だよねー」 あゆが笑って言う。 「そうだね」 私も笑うマークを出しながら答える。 二人は、汲んだジュースをやっぱり全部、私にくれた。 カタナは手伝ってくれてたの知ってたけど、やっぱりあゆも、私のために汲んでくれてたんだね。 なんとなく、そんな気がしてた。 あゆは、カタナの友達だけあって、カタナに負けないくらい優しい子だった。 飴とチョコの村を回って、可愛いキャンディ形の敵を倒したり、美味しそうなチョコの敵を倒す。 時々強そうな敵が出てくるけど、それはあゆがすぐに倒してくれた。 一人では、レベルが30になっても、すぐにこのワールドに来るのは難しそうだなぁ。 隣のマップに移動した途端、モンスターが溜まっていた。 「あゆ!」 瞬時にあゆが眼前に炎の壁を出す。 「オッケー! カタナはちっちゃいのを!」 「おう」 壁の内側から、敵を四方八方に散らすような技で、敵を壁の向こうに追い出す。 その間に、カタナがやたらと攻撃の早い、素早い敵3匹のタゲを取っていた。 地面に大きな魔法陣か浮かび上がる。 詠唱が長い。これが大魔法ってやつかな。 次の瞬間、魔法陣に囲まれた範囲に、数え切れないほどの雷が降り注いだ。 「ひゃあ」 バリバリと響く音と光に思わず耳を塞ぐ。 ぎゅっと閉じてしまった目をそろりと開けると、もう敵は1匹も残っていなかった。 「みさみさちゃん、驚かせちゃったね、急にごめんね」 あゆが気遣うように言う。 「あ、ううん。大丈夫……」 「あゆ、今のは仕方ない。みさみさ大丈夫か?」 カタナも、あゆを励ましながら私に声をかけてくれた。 「うん、大丈夫だよ」 スマホの音量もそんなに大きくしてなかったから、ちょっとびっくりはしたけど、それだけだし。 「そうか、良かった。人によっては、急な音や激しい光で具合が悪くなる事もあるからな」 そう言って、カタナは少しホッとした表情を見せる。 「そうなんだ……。私が知らないだけで、そういう人もいるんだね」 私の呟きに、カタナがちょっとだけ目を細める。 「ああ……。知っていれば、できる対策もある。白いノートが眩しくて困ってる奴とか、ちょっと暗い色のノートを使えば楽になったりするからな」 「へー。覚えとこう……」 カタナは色んな事を知ってるんだなぁと思いながら、その横顔を見上げる。 突然、横からあゆにぎゅっと抱きつかれた。 「みさみさちゃん素直っっ!! 良い子っっ!!」 「えっ、ええっ!?」 あゆがなでなでなでと私の頭を撫でる。 「ボクもみさみさちゃんと友達になりたいなぁ、ね、フレンド登録しようよっ」 「う、うんっ。私も、あゆと友達になれたら、嬉しい」 「わあーい、うれしいっっ♪♪」 手を取って、あゆがぴょこぴょこ跳ねる。 嬉しいと飛び跳ねるなんて、なんだかきなこもちみたい。 今日は狩場が高レベルで危ないから出してないけど、後であゆにもきなこもちを紹介したいな。 フレンド登録をお互い済ませると、あゆが取引ウィンドウを出してきた。 「良かったらこれもらって!」 なんだろう。と『はい』を押す、ウィンドウに入ってきたのは白いウサミミだった。 「あ、これ……」 「えへへ、お揃いーっ♪♪」 あゆが嬉しそうに笑うので、ありがたく受け取る。 「ありがとう」 「お近付きのしるしだよっ♪」 早速装備してみる。ウサミミはふかふかしていて、雪のような白い色は黒髪にも赤いリボンにもよく映えた。 んーっっ。可愛いっっ!! 視界の端で、カタナが一歩下がった。 「?」 振り返れば、カタナは籠手の甲で顔を半分ほど隠している。 「あれね、顔が赤くなっちゃったから隠してるんだよ」 あゆがそっと私に耳打ちする。 「え?」 「カタナ、可愛いの大好きだから。特に、ウサミミ大好きなんだよねー?」 からかうように、あゆに下から覗き込まれて、カタナが顔を逸らす。 「――っ、余計な事を言わなくていいっ!」 あ、本当だ。カタナはマスクで鼻から下が隠れてるけど、その目元がほんのり赤くなっていた。

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