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   読者諸賢は富嶽三十六景という葛飾北斎の連作をご存じだろうか。  知っている?それは素晴らしい。  では、この作品が何を伝えようとしているか、考えたことはあるだろうか?  私に言わせれば、この作品が言いたいことはただ一つである。  本当に美しいものの背景には、数知れぬ有象無象うぞうむぞうの物語がある。  富士の山は美しい。  そして、気高い。  富士の山を前にすると、我々主種雑多な無知蒙昧むちもうまいは、訳も分からず狂奔きょうほんし右往左往したくなる。  それは、鈴木桜子すずきさくらこ嬢を前にした時と同じである。  私はたった一通の恋文を彼女に送ろうとした。  そして、願わくは、たった一通の恋文を彼女から受け取ろうとした。  この物語は、一通の恋文の背後にある数珠繋じゅずつなぎの風景のごく一部である。

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