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「みんな、来てくれ!」 アズナはかくれんぼをしている仲間を呼び集めた。6人の少年達が剣を囲んであれこれ話し合い始めた。剣は彼らのあごのところくらいまでの長さだ。 「なんで剣が地面に刺さってんだろう?」 「売ったら高くつきそうだな」 などと口ぐちにしているところに足音が聞こえた。 「お前ら、そこで何をしている!」 重厚な鎧に身を固めた、強面の男が近づいて来た。 「あれって・・・」 「ああ、城の兵士長だ」 少年達は意外な人物の登場に驚いていた。 「ここは立ち入り禁止区域だ、お前らも知ってるだろう?」 そう言われて 「そういえばそうだったな」 「だから来たことがなかったんだ」 などと少年達は互いに笑いだした。 「笑いごとではない!」 兵士長は一喝した。少年達が静まったのを見て、 「よいか、この剣は500年前に伝説の勇者が魔王を封じ込めた、由緒ある剣である」 と語り始めた。 「今まで何人もの力自慢や腕利きの戦士が抜こうとしたが、誰にも抜くことができなかった。剣に選ばれた勇者だけが抜くことができるのだ」 少年達は兵士長の言葉を固唾を飲んで聞いている。 「魔王が力を回復しつつある今、この剣を狙って我が国に攻め込んでくるかもしれないのだ」 兵士長はひと呼吸ついてから続けた。 「一刻も早く、この剣を抜いて魔王と闘う勇者を見つけなければならない」 「なんか、聞いたことがあるような・・・」 「早く勇者が見つかるといいね」 少年達はやっと口を開いて話し始めた。アズナはというと、剣には興味がなく、夕飯のことを考えていた。 兵士長は少年達をひと通り見て 「まさかとは思うが、お前らの中にこの剣を抜くことができる者がいるのか?」 「まだ触ってもないよ」 少年達は首を横に振ってその場から退散しようとした。 「ものは試しだ、ひとりずつこの剣を抜いてみろ」 兵士長は少年達に命じたが、 「やだよ、気味が悪いよ」 と、みんな逃げ出そうとしている。 「いいからやってみろ!私に逆らうということは、王様に逆らうことと一緒だぞ!」 兵士長に圧倒されて、少年達は渋々剣を抜くことにした。 順番にひとりずつ抜こうとしたが、どんなに力を入れてもビクともしない。 「やはり、抜けんか・・・」 兵士長が落胆していると、端にいたアズナに目が向いた。 「そこのお前、まだやってないだろ!」 アズナは苦笑いをして 「いやぁ、僕は疲れることは苦手でして」 と両手を前に出して振る。 「いいからやれ!」 兵士長はイライラしながらアズナの手を引っ張った。アズナは仕方なく、 「(抜くフリだけしよう)」と思った。 アズナが剣の柄に軽く触れたとき、信じられないことが起こった。 「あれ、全然力を入れてないのに、なんか抜けちゃった」

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