ここまでの一週間でアキがノートにこれでもかと思いつく限りあげていた単語や考えを、ミモザはマインドマップという思考表に移して整える。 アキはミモザの質問に答えていくだけで、歌詞のテーマが決まり、歌詞が次々出来上がってゆく。 その様は、まるで魔法のようだった。 「ほわー……。ミモザは本当に色んなことをよく知ってて凄いよ……」 「そうかな? 普通だよ」 ミモザが文字数を数えながら笑う。 アキは、博学で控えめでおごらないミモザを心底尊敬していた。 「やった! できたぁ!!」 「うん、数もばっちりだね♪」 「早速空さんに送るねっ」 そんなアキをミモザが止める。 「待ってアキちゃん。せっかくだから、できた歌詞でお披露目動画撮っちゃわない?」 「あっ、それいいねっ! じゃあ早速録音しようーっ」 スマホを取り出して、アキはミモザの準備完了を確認すると録音ボタンを押す。 画像なしになってから、準備はもっと簡単になった。 「みなさんこんにちはー」 「こんにちは、A4Uです」 「今日は私達の新しい曲の歌詞が完成しましたーっ」 「アキちゃんが一週間悩み抜いて作り上げた大作ですっ」 「ミモザっ、いきなりハードル上げないでよーっ」 「ではアキちゃん、どうぞっ」 そこでアキが、ぴたりと動きを止める。 「……お披露目って、この歌詞読み上げるってこと……?」 「うん、もちろん」 「は、恥ずかしくない……?」 「私は組み立てただけだから恥ずかしく無いよぅ?」 「私は恥ずかしいよ!」 アキは両手で顔を覆ってのけぞった。 「ふふふっ、アキちゃんにも恥ずかしいことがあったのねっ」 「誰だってこんなの公開処刑でしょ!?」 「でもこれって、私達がこの後歌う歌詞でしょぅ? 慣れとかないと、ね?」 「あっ、ミモザっ。もしかして、わかってて誘った!?」 「ぇぇー? なんのことかなぁー?」 結局、歌詞は二人が声を揃えて読んだ。 「うーん、いい歌詞だよねーっ」 「アキちゃんが言っちゃう!?」 「ミモザが助けてくれなかったら、絶対完成しなかったもん。本当にいい歌詞だなって思う。ミモザ、いつもありがとうね」 「やだもぅ。照れちゃうよぅ」 「この歌詞は私だけでは絶対に出来なかったから、作詞の名前はA4Uにしようね」 「えっ、名前はアキちゃんでいいよ。私はアキちゃんの言葉を繋げたり並べ替えたりしただけだよ?」 「そこが一番大事でしょ」 「そんなことないよ、アキちゃんの用意した中身が一番大事だよぅ」 「中身だけあっても、あのままじゃ歌詞にはならなかったよ」 「でも……」 「じゃあ、どっちも大事ってことで。だから名前はA4Uね?」 アキに笑顔を向けられて、ミモザも渋々微笑んだ。 「……もう、アキちゃんには敵わないなぁ……」 そんな二人の歌詞お披露目音声に、書き上げたばかりの手書きの歌詞写真を添えてにゃーちゅーぶに投稿する。 空のRINEに歌詞の写真とお披露目動画のURLを添えて送信し終える頃には、投稿した動画にLeonNoteからコメントがついていた。 『とても良い歌詞で感動した』と、号泣顔文字連打のコメントに、アキとミモザは達成感でいっぱいの気分で笑い合った。
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