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彼女の話を聞いてみれば、なるほどなと思う内容だった。 彼女は強くて優しくて、やはりまっすぐな人だった。 友達を守りたいと思う優しさ、それを一人で実行できる強さ。 その二つを持っているが故に、自分が今も友達との約束を破っているという事実に苦しんでいた。 他人からの誹謗中傷にいちいち凹んでいる僕とは次元が違う。 彼女にとっては、誹謗中傷を投げてくる人ですら元気を届けたい相手の一人だ。 こんな鬱々とした僕とは天と地ほどに意識の差がある。そんな彼女が僕に励まされたなんて……本当だろうか? 『今日は沢山RINEありがとうございました!』 言われて時刻を見れば、もう夕飯の時間だ。 こんなに長く人とRINEで話したのは初めてだった。 『今日は僕の方がアキさんの言葉に救われたよ、ありがとう』 僕の言葉に返ってきたのは、ボイスメッセージだった。 再生すれば『応援してますっ』とスマホから元気いっぱいなアキさんの声が流れる。 「おわっ、急にびっくりするだろ!? なんか再生するなら再生するって言えよ」 大地に言われて「ごめん」と返しながら、大地の机の横まで行く。 「つか空が応援されてどうすんだよ。アキちゃんのお悩みはなんとかなったのか?」 「原因はわかった。解決はこれから」 「ふーん……」 僕の言葉に、肝心の大地は気のない返事をする。 「結論から言うと、大地がそれを完成させれば問題は解決する」 「俺!?」 「大地は明日から朝挨拶に来なくて良いから。とにかくそれを早急に仕上げて」 「えっ、マジで!?」 「クオリティが下がるとミモザさんが悲しむだろうから、なるべく最高の状態で」 「はぁ!?」 「一秒でも早く」 「ちょっ、空さん!? 目が据わってますけど!?」 「僕にできることがあればなんでも手伝うから言って」 「マジかよぉぉぉ……」 大地を精一杯急かすと、僕はPCで検索をする。 ボイスメッセージは長押しでは保存できそうになかったが、調べてみたところ一度アプリ内の別の場所に保存した後なら端末に保存できるようだった。 僕はアキさんの声を『宝物』という名前のフォルダに入れる。 そういえば、彼女は誹謗中傷を『気にしてない』と言っていたのに、大地の性別は『気になる』と言っていた。 なぜかはわからないけれど、それが僕にはなんとなく嬉しかった。

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