「じゃあ録画するよー。いい?」 ミモザがこくんと頷くのを確認して、私はスマホの録画ボタンを押した。 「録画スタートっ」 「皆さんこんにちはー」 「こんにちは、A4Uです」 「今回は、こちらの冬季限定チョコを実食しまーすっ」 「冬季限定チョコ、心踊るよね」 「ねっ! 限定って響きがいいんだよねーっ!! 冬季限定チョコ自体は今月の頭から少しずつ出てたんだけどね」 「うん、去年と同じ商品がね」 「いよいよ肌寒くなってきて、チョコ食べたくなってきたーってとこで、これが新発売だったので、買っちゃいました!!」 「メーカーはへスレさんですねー。発売日は昨日でした。これはコンビニ限定じゃないのでスーパーとかにも置いてありそうですね」 ミモザがさらりとメーカーに発売日や販売場所を説明する。 「ここってチョコ以外のお菓子はほとんど出してないよね」 「メインは飲料じゃないかな? コーヒーで有名なブランドだよね。パッケージに散らされてる雪の結晶がキラキラしてて、冬季限定な感じで可愛い」 「箱開けてみまーす。ペリペリペリ……。中は一個ずつ個包装になってるね」 「お皿に出してみますねー」 ミモザが手早く個装を開けて白いお皿にチョコを二つ並べる。 「おおー。いい香りするーっ」 「うん、チョコの甘い香りに、ほんのりナッツの香ばしい香りもするね」 「形はみんな同じかなー」 「ドーム形で……ナッツをイメージしてるのかな? いくつか細い筋がついてるね」 「食べてみますねーっ。いただきまーすっ、あむっ」 「実食しまーす。ぱくっ」 「うーん、とろけるーー!」 「冬季限定のなめらかさだね。暑いと溶けちゃうやつ」 「だねー。あ。中からニュルッとしたのが出てきた」 「プラリネだね」 「プラナリア?」 「違う違う。えっと、プラリネって言葉にはいくつか意味があるんだけど、この場合はナッツ類にキャラメルを加えてペースト状にしたものや、それが中に入ってるチョコの事だね。ほらこれ」 ミモザは私にパッケージに書かれた『アーモンドプラリネ』という字を指し示す。 「プラリネ……。じゃあ、プラナリアって何だっけ?」 「それは切っても切っても死なずに増える、にょろっとした生き物だよ」 「ニョロッ……」 「……うん」 「ニュルッ……」 「アキちゃん、プラナリアに寄せるのやめてね? プラリネチョコ食べづらくなっちゃうよぅ」 「もう一個食べていい?」 「どうぞどうぞ。パッケージには『秘伝のダブルロースト製法』『未だかつてない香りのアーモンドプラリネチョコレート』『冬だけの口溶け』『極上の一粒』と書かれてますねー」 「これは止まらなくなる」 「中のプラリネが本当にいい香りだよね。こんがり香ばしいアーモンドとキャラメルがたまらない」 「チョコがビターで甘すぎないから、次が欲しくなっちゃうよねっ」 「ちょっとアキちゃん、私の分も残しといてね?」 「大丈夫大丈夫……、て、ごめんっ。もう二個しかない……」 「七個入りだから、二個あればいいよ」 「えー、そっか、七個入りなんだねー。このくらいの量だと、一人で食べてももうちょっと食べたかったなーってなるよね」 「そのくらいが良いんじゃないかな。次も買いたくなるでしょ?」 「うーっ。また買いたくなるーっ!」 ミモザが楽しそうに笑いながら、また一緒に食べようと言ってくれる。 ここ一週間ずっと歌の練習を頑張っていたからか、歌声のファイルを送ってホッとした後の、ミモザと食べるチョコは最高に美味しかった。
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