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【舞台について】 清姫が【竜】になったという部分がいささか超展開の感があるが、どこで作られた話なのかを考えると納得できる部分もある。 この物語は当時の紀州、今の和歌山が舞台となっている。 和歌山は『山』とつく通り山が多く、その合間を流れる川が沢山ある。 清姫が竜になった日高川もそんな川の一つであり、たびたび氾濫を起こすような【暴れ川】だった。 ヤマタノオロチの例を出すまでもなく、日本では【暴れ川】は【竜】によく例えられる。そのため、この日高川から竜が出てくるというのは地元の人には納得しやすかっただろう。 また、本文に書いてあったとおり清姫は真砂の里の庄屋の娘である。 庄屋の家には米を蓄える蔵がいくつもある。ということは、その米を狙うネズミが寄ってくる。 ネズミを退治するもののひとつに、【蛇】がいる。山が近ければ、なおさら蛇が身近にいただろう。 【蛇】は幸運を運んでくるという説もある。ネズミは病気も媒介するので、それを避ける意味もあっただろう。 このように【蛇】は庄屋にとって歓迎できるものだった。 そして何より日本の【竜】とは【龍】、つまり大蛇である。 さらに清姫の母が【竜】(大蛇)だったという説もある。 清姫は【竜】にとても近かったのだ。 【安珍について】 安珍は日高川を渡ってどこへ行こうとしていたのだろうか。 安珍は修験者であった。出身は昔の奥州白河(今の福島県白河市)だったらしい。 修験者は修行のために全国を歩き回る。安珍も修行のために熊野山へ来た。 その帰りに日高川を渡ろうとしていた。その日高川の先にあるのは【大阪】である。 大阪には堺の港がある。たくさんの船が寄港する、移動に適した場所である。 徒歩であっても船に乗っていたとしても、堺の港は利用しやすい場所だっただろう。 【仏教説話】 安珍清姫の物語は、仏教説話の面がある。安珍と清姫が死んだ後、熊野権現と阿弥陀如来になって降臨した、とするものもある。

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