スキルイータ
第百九十九話

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 新しいダンジョンコアのチェックができた。  あとは各地に作っていけばいいのだけど・・・。 「チアル。新しいダンジョンコアは意識が芽生えてから作ったほうがいいのか?それとも、その前にダンジョンの場所だけ決めてしまったほうがいいのか?」 「ペネム。ティリノ。あなた達はどうだったの?」 「ダンジョンを作ってからのほうが良いと思われます。今の状態だと、どこが自分の本拠地なのかわかりませんので、明確な場所の指定をしておいたほうがいいかと思います」 「我も、ペネムの意見と同じです。マスター」  ダンジョンコアの意見だからな。  アンクラム/ミュルダ/サラトガ/ユーバシャールを回ってダンジョンを作ってから、ロングケープ/パレスケープ/パレスキャッスル/ロックハンドと回ればいいかな。  まずは、アンクラムから行くか?  もうすぐ、ホームの設定を変更してから一日経過するから、倍率を戻して、眷属たちはホームの中に入ってもらって移動すればいいかな。エリンに乗っていけば、それほど時間もかからないだろう。  翌日。倍率を戻してから、軽い気持ちで移動開始。  交渉になるのが解っていたので、ルートガーとクリスを強制的につれていく事にした。  そしてホームの事を教える必要になった事に気がついた。  ここで重要な事がわかった。気がついたと言うべきなのだろう。  クリスは、俺の眷属になっているので、問題なくダンジョンに入る事ができた。  ルートガーとスーンが入られなかった。  ルートガーは、当然だろうと思ったのだが、スーンは?となったが、スーンはライの眷属なのだ。そして、ライは俺の眷属なので、大丈夫だと思っていたのだが、そうではなかった。  ライを登録することで入る事ができた。同じくクリスを登録する事で、ルートガーが入る事ができた。  執事エントメイドドリュアスは、必要になったら考える事になった。  ゼーロやヌルやヌラも入られる様になったのが、それほど必要性は感じないようだ。ログハウスと洞窟を守る事を主目的と考えてくれているからだ。 「ツクモ様?」 「なんだよ?」 「何度も、何度も、何度も、言ってきましたが、あんた馬鹿だろう?」 「クリス。お前の旦那・・・。ひどいな、主筋に向かって、馬鹿って言っているぞ」 「申し訳ございません。ツクモ様。僕も、ルートと同じ意見です」  どうやら味方は、シロだけのようだ。  オリヴィエとリーリアは、関与しない雰囲気を出している。 「いいだろう?楽に移動できるのだから!」 「そこじゃない!」 「じゃぁどこだよ!?」 「このホームとかいう場所の事だ!」  ルートガーとクリスとスーンとゼーロとヌラとヌルを、俺のホームに招待した。  ブルーフォレストダンジョンのお披露目の意味もあったのだが、流れでホームにも来てもらった。転移門の設置を含めての説明を行うためだ。説明は一度でおこなったほうが楽だからな。 「ホーム?便利だろう?何がダメだ?」 「はぁ・・・」 「ツクモ様?本当に気がついていませんか?それともわざとやっていますか?」  クリスが何げなくひどい言い方をする。 「ん?俺以外に使う事は無いし、物流が死ぬ事はないと思うぞ?それに、転移門もさっき見たように、認証された人以外には入られないようにしているからな。それに、ここに大量の兵を入れて、他の街でいきなり開放なんて馬鹿な事はしないぞ?相手がまともな手段で戦いを挑んできた時に限るけどな」  え?違うの?  ルートガーが盛大に息を吐き出した。いわゆるため息という奴だ。 「ツクモ様。戦いのときには是非使ってください」 「え?いいの?」 「えぇできるだけ他の街と戦闘になるような事は避けます。これは、俺や元老院の仕事です。しかし、それでも戦闘になってしまったときには、是非ツクモ様の力を貸してください。被害を最小限に抑える事が最大の目的です」 「そうか・・・。それなら何が問題だ?」 「物流も正直困りますが、片方がホームなら問題は無いでしょう」 「だよな?」 「はい。問題は、ホームの中にツクモ様とシロ様が引きこもってしまう事です」 「ん?あぁぁそうか、連絡が全く取れなくなる事か?」 「はい。それが一番心配です」 「でも、今までも、ダンジョンに潜ったりして数ヶ月の間居なかった事があったよな?」 「はい。しかし、ホームの場合は数年単位で引きこもる事が可能です」 「クリス。数年って・・・」 「無いと言えますか?」 「ごめん」 「それに、ホームの中に転移門が作られるという事ですので、ほぼ出てこない事が想定されます。それに、ここは広いですからね。執事やメイドが、入ったらログハウスと同じですよね?」 「あぁそれはしないつもりだ」 「・・・。わかりました。いまは、それを信じておきましょう」 「ツクモ様。クリスの念話は繋がるのですか?」 「繋がらない」 「なにか、連絡出来る手段があると嬉しいのですが?」 「あぁ・・・そうだな。何か考えておく。ん?クリスかルートガーなら俺を呼びに来られるよな?」 「え?」 「ブルーフォレストダンジョンに入る必要はあるけど、クリスとルートガーとヴィマとヴィミとイェレラとラッヘルとヨナタンとイェルンとロッホスとイェドーアなら、眷属枠で転移門の部屋に入られるだろう?」 「あっ」 「転移門が使えれば、ホームに来られるからな」 「・・・・。そうですね。わかりました」「はい」  少しだけ、勝った気分になれて嬉しかった。  それから、少しクリスとルートガーからホームの使い方についての注文を受けた。  全部ではないが受諾した。クリスとルートガーの子供・・・。孫くらいの世代になれば、俺は必要無くなるだろう。それまでは、おとなしく従っておくことにする。  アンクラムは、街の城壁の外にダンジョンを作る事になった。  そこで、想像していなかったが、俺にとって都合が良い事が発生した。  アンクラム・ダンジョン・コアのRADには、ブルーフォレスト・ダンジョン・コアのRADに使ったスキルがすでに導入されていた。  それだけではなく、ブルーフォレスト・ダンジョン・コアも同じRADから操作出来るようになっていた。  アメリカの世界的な巨大IT企業で作られている開発ツールを使った事がある人なら想像出来るだろう。  ソリューションが作られていて、その中にブルーフォレストダンジョンとアンクラムダンジョンが出てきているのだ。  シャイベダンジョンが出てこないのは・・・。  そう思っていたら、ソリューションの名前が”シャイベ”になっている。  シャイベの兄弟ではなく、子供のように認識されたようだ。  よくわからないが、こういうモノだと思っておけばいいのだろう。釈然としない気持ちもあるが、ダンジョンを作り始める事にした。  コピーする事が出来るので、同じ様に作成しておく。  本格的なダンジョンは、全体会議が終わってから作ると代官には説明してある。  認証に関しても、独自に行うか、共通の物を使うのかを選べるようだ。  独自でおこなった場合には、シロには入る事が出来なかった。その後に、共通の物に変更して入る事ができた。細かい設定も出来るようで、転移門の部屋の前は、俺とシロとステファナとレイニーと眷属だけが入られるようにした認証付きの扉が設置した。  ここまで出来る事がわかれば、あとは順番に作っていくだけだ。  ルートガーの要望でクリスは行政区に戻ってもらう事になった。  ロックハンドを除く場所では、城壁の外にダンジョンを作る事になった。  エリンに運んでもらって、ダンジョンを作る作業をおこなった。  ロックハンドを除いたダンジョンの作成に4日ほどかかってしまった。  そこで、ルートガーの役目は終わりになる。  ロックハンドには、俺が赴いて、イサークに話をする事になる。イサークというよりも、ナーシャの対応を考える必要がある。  土産物を考慮する必要がありそうだ。  さて、ルートガーをクリスの所に戻してから、ロックハンドに持っていく土産を作る。  本来ならこんな事は必要ない。俺が命令すればいいのだが、イサークには頑張ってもらっているし、ナーシャも頑張っているのは知っている。イサークたちが調整したロックハンドが保養地としての役割を担っている。特に、女性向けには最高の場所になっているようだ。  さて定番の土産は作った。  新しいレシピを持っていってやるか・・・。  ところてんのレシピを渡して、綿菓子と羊羹とあんこのレシピを渡しておけばいいかな。イサークやガーラント向けに、酒のレシピや材料になる物だな。あとは、ダンジョンの実験をするのならロックハンドで行うのが、融通がききそうだからな。  実験を兼ねて、ダンジョン内でいろいろ作ってもらうことにしよう。 「イサーク。久しぶりだな」 「ツクモ様?!」  エリンに乗ってロックハンドに来たが、かなり発展している。  建物も結構立ってきている。 「ど、どうして?俺なにか・・。いや、ナーシャですか?」 「あぁ違う違う」  慌てるイサークに事情を説明した。 「よかった。あの馬鹿がまた何かやったのかと思いましたよ」 「大丈夫だ。それよりも、ダンジョンを作りたいけどいいか?」 「え?あっ問題ないです。どこにしますか?ティリノダンジョンの支配領域は避けたほうがいいですよね?」 「そうか、森の中はそれがあったよな」 「はい。ですので、この区も家や商店が作られる場所が少なくて・・・」 「・・・。すまん。少し待ってくれ、今、あるダンジョンは残した方がいいよな?」 「え?そうですね。資源にはなっていますからね」 「資源?」 「・・・。ツクモ様?ダンジョンの魔物を狩って、資源にしているのですけど、まずかったですか?」 「違う。違う。そうか、そうだよな。うーん」 『ティリノ。この辺りのダンジョンって?』 『えぇーと変わっていません』 『そうだよな。解除出来るか?』 『支配領域ですか?』 『そうだ』 『はい。大丈夫です』 「イサーク。悪かった」 「え?ツクモ様?」  事情を簡単に説明する。 「はぁ・・・わかりました。それで、どうしましょうか?」 「支配領域は解除した。小さいダンジョンも潰した。魔物は出てこないと思うけど、暫くは注意してくれ」 「わかりました」 「さて、次だが、甘味のレシピと、海で取れる物を使った加工品のレシピを、イサークにあずけておく、どうするかは任せる。あと、新しいダンジョンだけど、海の近くに作るけどいいよな?」 「それ、俺に拒否権はありますか?」 「ない」 「それなら、聞かないでくださいよ。虚しくなります」 「様式美だ。それに、お前にとっても、ナーシャにとっても悪い事じゃないぞ?」 「え?」  ダンジョンの中のことを説明する。 「そうなると、安全に肉や卵が確保できるのですか?」 「そうだな。実験だからな。それに、花を植えてビーナ・・・の様な昆虫を放すから、はちみつも集まる」 「そりゃぁナーシャが大喜びだな」 「ビーナが集めた蜂蜜ほど甘くは無いかもしれないけど、取れた蜂蜜は、ここで好きにしていい。あと、レシピを置いていくけど、砂糖とメイプルシロップの作り方だな。あと、各種酒精が入った飲み物の作り方と材料を得る為のダンジョンを作っていく」 「え?よろしいのですか?」 「そうだな。あと、魔物が出る階層も作っておくからな」 「え?あっありがとうございます」 「あっ忘れていた。イサーク!」 「え?なんか、とてつもなく嫌な予感がするのだけど?ツクモ様?」 「悪い事じゃない。今度出来るダンジョンは、潜る人間を制限出来る」 「え?」 「だから、中に入る人間を制御出来るってことだよ。砂糖とか、はちみつとか、酒精な物だぞ?絶対に盗みに入るだろう?」 「あっ」 「だから、中に入る人間を細かく制御出来る」 「・・・」 「まぁいい。最初はわからないだろうから、ある程度の物ができてから、制御のことを教える」 「えっ・・・。そうしてください」  いきなり過ぎたな。  確かに、認証機能の話をしてもダメだろう。  集落ができ始めている場所から離れた場所にダンジョンの入り口を作る事にした。  洞窟の様に横穴を掘ってから、中にダンジョンの入り口を作る。それっぽい形にした。  最初は、今までと同じ様にコピーした。転移門を作って、ホームにつなげた。  ここまでは今までと同じだが、ここからは違う。  ロックハンドダンジョンだけは資源確保と実験の意味合いを持たせる。  イサークに宣言した通りに、二階層には蜂蜜が製造出来るように、花とミツバチを配置する。  RADにミツバチが存在していたので、配置する事にしたのだ。上手くできれば、養蜂場が出来る。  三階層は、サトウキビや楓を植えた場所を作った。  小麦やぶどうも作った。こちらの品種との違いを比べるためだ。これらの物を作って、イサークに説明した。  据え置き型の登録アイテムを、代官の屋敷に配置した。  イサークが発行しなければ、ダンジョンの中に入る事ができない。これで暫く様子を見てみる事になった。  丁度、森の探索から帰ってきた、ナーシャが歓喜していた。  なぜか、一緒に居たカトリナがなにかブツブツ考えて、イサークに相談を持ちかけていた。  いい感じにしてくれることを信じる事にしよう。

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