スキルイータ
第百八十七話

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 5階層での戦いも、30回目を数える。  今回も最後はゴブリンの集団だ。戦い方がパターン化している。 「オリヴィエ。どうだ?」 「やはりダメですね」 「そうか・・・。攻撃系以外はもう出なくなったか?」 「振動や停止や拘束は出ますが、転写や呼子も出なくなりました」 「そうか、それじゃ次で終わりにするか」 「かしこまりました。今回はゆっくり休まれますか?」 「そうだな。そうするか?」 「はい」  やはり。感覚的に解っていたのだが、スキルカードの上限に達してしまっているのだろう。  いい考えも浮かばない。  スキルカードを使えばいいのだろう・・・。うん。無理だな。俺には、手元に数が少なくなってきているスキルカードを使う事はできない。攻撃系は使う事ができるが、それ以外のスキルカードは運用でどうにかなるレベルではないだろう?神に仕様の抜本的な変更を依頼したい所だ。  現実逃避していても何も変わらないのは解っている。  でも、現実逃避しかする事がない。  オリヴィエたちは浴場の準備を始めた。眷属たちの浴場を先に用意するようだ。 「旦那様」 「どうした?」  エーファがティアとティタを連れてやってきた。  風呂待ちをしている雰囲気ではない。 「ティアとティタなのですが、進化して、フォレスト・グリーン・フォックスとフォレスト・ホワイト・フォックスになりました」 // 名前:ティア・ブルーホルツ // 性別:オス // 種族:フォレスト・グリーン・フォックス // 称号:カズト・ツクモの眷属 // 固有スキル:魅了・誘引(レベル1) // 固有スキル:成長促進(レベル1) // スキル:念話 // スキル:樹木 // スキル:--- // スキル:--- // スキル:--- // スキル:--- // スキル:--- // スキル:--- // 体力:D // 魔力:C // 名前:ティタ・ブルーホルツ // 性別:メス // 種族:フォレスト・ホワイト・フォックス // 称号:カズト・ツクモの眷属 // 固有スキル:魅了・誘引(レベル1) // 固有スキル:薬生成(レベル1) // 固有スキル:治療(レベル1) // スキル:念話 // スキル:--- // スキル:--- // スキル:--- // スキル:--- // スキル:--- // スキル:--- // スキル:--- // 体力:D // 魔力:C  なかなかおもしろい感じに進化したな。  よく見ると、しっぽがティアは二本になっていて、ティタは三本になっている。 「エーファ。どうする?」 「旦那様?」 「説明が足りていないな、エーファと同じように、スキルをつけるか?それとも、もう少し様子を見るか?」 「そうですね」 「マスター。眷属のスキルなのですが、洞窟にお戻りになってからでよろしいかと思います」  オリヴィエが珍しく口を挟んできた。 「どうしてだ?」 「はい。今急いで行う必要がないと思います」 「それは、理由ではないよな?」 「理由は、手持ちのスキルカードで行うよりも、洞窟に戻られてから、スキルカードを選別してから行うほうが良いかと思います。それに、まだ5階層ですこれから、上の階層に行けば珍しいスキルカードが入手できるかもしれません」  オリヴィエが考えているほうが正しいように思える。 「旦那様。ティアとティアは、もう数段階進化すると思われます。人化を得るかもしれません。その時に、改めてご相談させてください」 「そうか、わかった」  ティアとティアの頭を撫でてやる。  進化体になるのは一部だと思っていたのだけど、これだけ戦っていれば、進化もするのだろう。  それにしても // 固有スキル:成長促進(レベル1)  や // 固有スキル:薬生成(レベル1)  は、初めて見るけど、なかなか面白そうだ。  薬という概念がある事がわかったのが大きい。ポーションもどきが作れて、世界が認識したのかもしれないけど、多分作り方は同じようにすればいいのかもしれない。毒物も生成できるかもしれない。薬と毒は紙一重だからな  成長促進は、帰ってからの実験にはなるけど、品種改良を行う時に有効に働きそうだな。  今回は必要にはならないかだろうが、野営地を偽装したり、建物を古くみせたり、草木と併用すればできる事は多くなりそうだ。 「ご主人様。お食事の準備が整いました」 「ありがとう」 「エーファ。ティアとティタのスキルは攻略してから考えよう」 「はい。ありがとうございます。よろしくお願いいたします」  エーファが綺麗なお辞儀をする。  リーリアが仕込んだのだろう。  今日も肉が中心の様だ。 「リーリア。食料は大丈夫だよな?」 「はい。まだ余裕があります」 「雑感でかまわないから、あとどのくらいだ?」 「気になさるほどではありません。1年近くは潜っていられます」 「わかった。少し減ってきているようだな」 「そうですね。調味料は大丈夫ですが、果物がこのペースで食べると、3ヶ月くらいで無くなります」 「そうか、2ヶ月を攻略する為の期限と考えるか?」 「それでしたら、もう少し出しても大丈夫だと思います」 「リーリアに任せる」 「はい」  ステファナが居るから、果物系は必須だよな。俺も、果物が有ったほうが嬉しいからな。  スキルカードの入手を重要視して少しゆっくりしすぎたかもしれないな。  眷属の進化体なら5階層くらいまでなら上がってこられそうだよな。  自動的に、扉も閉まるし、不都合は少ないよな。少しスーンと相談すべき案件だな。進化体を大量に突入してスキルカードを集めても希少価値があるものがでなければあまり意味は無いからな。  階層数がわからないけど、スキルカードや魔核のレベルから考えると、10階層まであると思っていいだろう。  11階層にダンジョンコアとダンジョンマスターが居ると想定すると、あと5階層あるのだろう。  それ以上だった場合には、その時に考えればいい。5階層を1ヶ月で踏破すると考えると、4日で一つの階層を抜ければいい。7/8/9/10階層のスキルカードはあまり期待できないだろうな。今から考えてもしょうがないことだろうけど、一つの階層を4日と想定して攻略を行う事にしよう。 「オリヴィエ。これからの予定として、一つの階層を抜けるのに4日間とするけどいいか?」 「?問題はありません」 「どうした?」 「いえ、主に、スキルカードの入手をお考えかと思っていたので、日数を区切られる必要はないと思いますが?」 「そうだけどな。食料の事もあるからな」 「わかりました」 「頼むな」 「はい」  オリヴィエに言っておけば大丈夫だろう。 「シロ、どうした?」  俺の後ろでシロが少しだけ拗ねているようだ。 「カズトさん」 「ん?」 「お風呂行きませんか?」 「あっそうだな。シロ。待っていてくれたのだな」 「はい」  シロを待たせていたのだな。  確かに、食事の前に、食事の後で風呂にゆっくり入ってから寝ると伝えていたからな。  ここで、先に入っていればよかったなどと発言いして、地雷を踏み抜かない。 「わかった。風呂に入って寝るか?」 「はい!」  風呂に入って、テントに潜り込む。  シロの温かさを感じながら目を閉じる。 --- 「よし、今回で5階層を抜けるからな。ゴブリンを倒したら、扉を抜けるぞ」 「はい!」  オリヴィエに話した事だが、皆に伝わっているのだろう。  戦略は今回も同じだ。 「旦那様。岩壁はどういたしましょう?」 「あーそうだな。別に残しておいても困らないだろうから、残しておくか」 「わかりました」 「エルマン、エステル。頼む!」  俺の指示を受けて、エルマンとエステルが飛び立った。  魔法陣が現れて、カウントダウンが始まる。  リザードマンから倒していく、カイとウミとエリンとアズリには、リザードマンを突破したらコボルトを頼んだ。俺達は、そのままオークの集団を倒して、いつものパターンでゴブリンを挟撃する。  最後のゴブリンの上位種が神殿に吸収されたのを確認して、上層階に向かう扉を目指す。  スキルカードと魔核は全部拾えていると思うが、取りこぼしが有ってもしょうがないと思っている。  6階層への道も今までと同じようにスロープを上がっていくようになっている。  扉の大きさも同じくらいだ。  外観と同じく中身も同じような造りになっているのかもしれない。  ステファナとレイニーが扉を開ける。  一応用心をして中に入る順番を決めている。俺とシロを先頭にして。エリンとアズリが続く、カイとウミがその後に入ってくる。中が見渡せない事から、全員が入られると思っている。順番は用心のためだ。  ウミが入った時点で魔法陣が現れた。 「え?」  シロから声が漏れる。  俺も驚いている。全員で戦えると思っていた。 「シロ!」  ライが入ったカバンはステファナが持っている。 「シロ。武器はあるか?」 「大丈夫です。スキルカードも持っています」 「戦闘準備!」 「はい」 「カイ。ウミ。シロを頼む」 『はい』『わかった』 「エリンとアズリは、俺と一緒だ」 「はい」「うん!」  魔法陣の中心にはミノタウロスのようだ。上位種だと思える。  ギガント・ミノタウロス。  たしか、55階層くらいで出てきた階層主だ。  今更ひるむ相手ではない。周りにお供が居なければ余裕だろう。  進化体は出てこないようだ。  魔法陣が一つではない。  3つの魔法陣が追加される。  コボルトとゴブリンとオークが現れる。間に合うか?  まだカウントダウンが始まっていない。  コボルトとゴブリンとオークの魔法陣の周りを岩壁で覆う。 「シロ!」 「はい。スキルカードはもっています。コボルトの周りを覆います」 「蓋も作られるか?」 「やってみます」 「頼む。エリン!」 「パパ。ゴブリンを覆うよ」 「スキルカードはあるか?」 「大丈夫!」  俺がオークの周りを覆う。 「ウミ。手伝ってくれ、オークの周りを覆う」 『うん!』  これで、大丈夫か?  ミノタウロスの通常種も現れ始める。  間に合ったようだ。  蓋もできた。  これで、各個撃破できる。  少し、ゴブリンとコボルトが混じったかもしれないけど、後で調整だな。 「行くぞ!」  ミノタウロスの魔法陣のカウントダウンが終わって、階層主たちが動き出す。  コボルト、ゴブリン、オークも進化体は居ないようだ。魔物としては、上位種が居るだけで、大半が通常種だ。これなら、6人で対応ができる。俺達は問題ないとしても、次の6名をどうする?  そもそも、俺達が残った状態で戦えるのか?  階層主を倒してから考える必要がありそうだ。 「カイ。階層主を頼む」 『主様!』  横から通常種が攻撃をしてくるが、シロが防いでいる。 「大丈夫だ」 『はい』 「カズトさん」 「シロ。そのまま、通常種を倒せ。俺は一歩下がる」 「はい」  俺が下がった所につられて、通常種の数体が入り込む。  スペースは少ない。通常種でも大きさからお互いの攻撃を阻害している。  ウミがスキルで攻撃を加える。  アズリが後ろに抜けて、エリンと2人でスキル攻撃を行う。 「シロ。下がれ」 「はい!」  ギガント・ミノタウロスではない上位種がシロの横から攻撃を加えてくる。結界で防がれたようだが、シロが下がった事で、一体が開いたスペースを埋める。俺が、シロを攻撃していたミノタウロスの上位種の足を切る。体勢を崩した所に、シロの攻撃がヒットする。  30体近くいた通常種と階層主以外の上位種が倒された。  階層主もカイによって倒された。  よし! 「オークを倒すぞ。シロ」 「はい。一部の岩を壊します」 「頼む」  これからは作業になる。  シロが壊した岩の隙間から一体一体出てくる。多くても二体だけだ。  各個撃破していくだけだ。  最後の階層主は、岩壁から出てこなかった。中に入って6人で一斉攻撃して倒した。  ゴブリンとコボルトも同じように倒した。  全部の階層主を倒した所で、前方の扉だけが開いた。  やはりか・・・。戻って仲間と合流して戦う事はできそうにない。  ステファナとレイニー以外はスキルで呼び寄せる事ができるだろう。 『マスター!』 『オリヴィエ?』 『よかった。念話も繋がらない状況でしたので、ご心配しておりました』 『そうか、こちらは全員が無事だ』 『こちらも、全員揃っております。今後はどういたしましょうか?』 『そうだな。連続で戦う事は難しいだろう。前方の扉しか開いていない。多分、俺達全員が前方に抜けた所で、入り口が開く仕掛けだろう』 『はい。エーファとも話しましたが、そうなっていると思います』 『ステファナとレイニー以外は呼子が使えるだろう?』 『わかりません』 『試してみるしかないか?』 『はい。マスター。シロ様がレッチェを、マスターがティアとティタをお呼び出しください』 『なぜだ?』 『はい。呼子が使える事が解れば、ステファナとレイニー以外は、階層を越えられます』 『そうだな』 『そこで、ライ兄さまと私とリーリアとエーファとステファナとレイニーで階層を抜けます』 『そうか、それが最善か?』 『はい。もし、呼子が使えない場合には、ライ兄さまとステファナとリーリアとレッチェとエルマンとティアが次に入ります。そして、レイニーと私とエーファとティタとレッシュとエステルで抜けます』 『わかった。呼子を使ってみる』 『お願いします』 「シロ。呼子で、レッチェを呼び出してみろ」 「はい!」  シロがスキルを発動したら、レッチェが呼び出された。  呼子は伝えるようだ。 『オリヴィエ。呼子が使える』 『はい。マスター。ティアとティタとレッシュとエルマンとエステルをお願いします』 『わかった。オリヴィエ。リーリア。ステファナ。レイニー。エーファ。そして、ライ。スキルは使えるだけ使っていい。さっさと階層主たちを倒して合流しろ!』 『『『『『『はい!』』』』』』  長い長い時間  閉められた7階層に向かうスロープで扉が開くのを待っている。  戦闘音でも聞こえてくれれば多少が¥は想像ができるが、音も一切聞こえない。  念話も通じない。 「カズトさん」 「大丈夫だ。オリヴィエも居るし、エーファも、リーリアも居る、何よりも、ライが居る」 「そうですね。ライ兄さまが居て・・・」  何度も同じ会話をする。  どのくらいの時間が経ったのだろう。  扉が開いた。  多少の攻撃を受けたのだろう。傷がついているが全員が無事な姿でこちらを向いている。  ティアとティタが扉から中に戻った。  6階層に戻る事はできるようだ。  せっかくだから、6階層で休む事にしよう。 「オリヴィエ。リーリア。ステファナ。レイニー。エーファ。それに、ライ。お疲れ様」

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