スキルイータ
第八十話

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 考え事をしている間にも、なにか喚いているが、人の言葉とは思えない。 「もう。面倒だ!私がこれだけ優しくしているのにつけあがりやがって!」 「はぁつけあがっている?違いますよ。オークに話しかけられて、何を言っているのか理解できなかっただけですよ」 「・・・・私はオークか?!」  おっ!解ってくれた。嬉しいね。オーク相手でも意思疎通ができると嬉しいものだな。 「あっこれは失礼した。オークに失礼でしたね。謝罪しなければならないですね」  オークがわなわな震えだした。 「トイレですか?オークにトイレと言ってもわからないですよね。申し訳ない」 「お前たち!ツクモを捕えろ。顔は傷つけるなよ!私の物だからな!」  気持ち悪いな。本当に・・・。  では、”さようなら”だな。 「ウミ。好きにしろ!」  ウミが飛び出して、ギルド長を吹き飛ばす。かなり頭に来ていたようだ。  さすがは、イサーク並の冒険者というところか。すぐに臨戦態勢に入り、スキルの詠唱を行っている。  だか遅い!  ウミがまず詠唱している奴らを攻撃する。殺すなという命令を守っているために、1~2発のスキルが発動したが、エリンの結界を破れない。剣を持った数名が突っ込んできたが、スキル詠唱した奴を攻撃していたウミが戻ってくる。  後方に居た連中が弓矢で攻撃してくるが、結界で阻まれる。剣を持った男が、ウミに倒されている。ウミは、軽く体当たりをした程度だが、かなりの距離吹き飛ばされている。  弓矢を持った奴も、俺に矢が届かない事を悟って、前に出ているウミに狙いを定めるが、動きについて行けない。  そのまま翻弄されて、1人、1人と倒されていく。スキル詠唱を諦めたのかスキルカードの詠唱を諦めた奴が俺に突っ込んでくる。  カイもライも動かない。  本当に、ウミだけにやらせるようだ。  弓を持った奴らが倒されて、残っているのは、5人だ。 「ライ。倒れているオークを拘束しろ。カイ。他に隠れているやつらを殲滅してこい」  そんな命令を出す時には、残っていた5人も倒されていた。  ウミが俺のところに帰ってきた。 「ライ。倒れている奴らを全員縛って1ヶ所に集めろ」  仕上げに入ろう。  スキル水を使う。  ついでにスキル氷を使って水を冷やしてやる。次に、スキル炎で水を熱くしてからぶっかける。  最後に、スキル風とスキル氷を併用して、冷風を拘束されている奴らに吹きかける。 「おい。起きろよ!」 「おおおおお、はははははななななせせせせせせ。おれれれれをををだれだととおもももっててている」  歯が噛み合わないのか、かわいそうに震えてしまっている。  温めてやろう。 「寒いようだな。温めてやろう」  何も言わない。本当に、寒いようだ。 「エリン。コイツら寒いようだから、ブレスで周りを温めてやれ!そうだな。ギリギリの結界を作られるか?」 「うん!わかった!やってみる!」  エリンが竜形態になる。  知らされていなかったのか?そんなにびっくりする事か?  結界を展開してから、ブレスを放つ。  エリンもうまく調整できるようになってきたようだ。  結界が壊れない程度の強さでブレスを放っている。ブレスが結界で阻まれるたびに安堵ともとれるオークの鳴き声が聞こえる。  訓練場のドアが開けられた。 「ツクモ様!」 「おぉシュナイダー老!どうした?」  ため息ともとれる声が聞こえた。 「ツクモ様。後は、儂らに任せてもらえないだろうか?」 「あぁいいぞ。そうだ、そこのプロイス・パウマンとシュイス・ヒュンメルは、去勢は必須だ。後は、殺すなりなんなり自由にしろ」 「はっ」 「あっそうだ。シュナイダー老。ミュルダや近隣の村で、幼い女児や男児が行方不明になったりした事は有るのか?」 「え?あっあります」 「この数ヶ月増えていないか?」 「・・・・増えております」 「そうか・・・こいつらの屋敷を調べろ、まだ間に合うかもしれない」 「はい!」  シュナイダー老は、後ろに控えていた連中に命令を出している。  生き残るのと、殺されているの・・・どっちがいいのだろう?俺にはわからない。わからないけど、生き残っていて欲しい。そうしたら、忘れるくらいに楽しい事を教えてやろう。記憶を司るスキルがあったはずだ。それでなんとかできるのなら、スキルカードを探そう。 「シュナイダー老。すまない。プロイス・パウマンとシュイス・ヒュンメルは殺さないでくれ、もし、子供の件で主犯だと認められたら、村々を回らせよう手足を縛って磔の状態にして・・・死ねないように、回復や治療を行おう」  自己満足なのだろう  他にやり方がわからない。シュナイダー老を見る。 「まずければ言ってくれ。俺を思っての助言なら聞く」 「いえ、ツクモ様。調査して手配いたします」 「あぁ頼む」 /*** カズト・ツクモ Side ***/  新領主のシュイス・ヒュンメルの屋敷からは、10歳以下の幼女が大量に見つかった。心が死んだ状態で・・・だ。肉体的にも死亡している者も存在していた。  そして、案の定プロイス・パウマンの屋敷から、心が壊れたり、本当に死んでしまった男児が見つかった。同時に、それらを調達していたのが、アトフィア教の獣人殲滅部隊であることが解る証拠も見つかった。  後始末を、シュナイダー老に任せた。  殺さないように苦しんでもらう事にした。当初は、磔状態で村々を回らせるつもりだったのだが、シュナイダー老が調べた結果。子供の親は生きていない事が判明した。アトフィア教の殲滅部隊の奴らは、子供をさらって、クズ共に売って活動資金を得ていた。さらう時に、最初は孤児を狙っていたのだが、孤児では数が足りなくなってきてからは、親を殺してから子供を攫うようになっていたようだ。  二人と冒険者は、俺の実験に付き合ってもらう事になった。場所は、ペネムダンジョンで行おうと思っている。  活動していた殲滅部隊の奴らを探させているが、既にミュルダを出てしまっていて、足取りを見つける事ができない。  生き残った子どもたちは、神殿区に作った療養施設で過ごしてもらう事にした。  子供たちの救済方法を、竜種に問い合わせたらレベル8記憶で、記憶を消す事ができるようだ。スキルカード自体が少なくて、使った者も少なく、実際に効果があるかは保証できないと言われた。可能性があるのなら、試したくなる。  俺たちが取得しているスキルカードを、スーンに調べさせたがレベル8記憶は無かった。  取りに行くにしても、あと10階層くらいは潜らないとならない。苦でもないが、その前にやることをやっておこう。  シュナイダー老は、約束通り、長老衆を率いて行政区に来た。  数日遅れて、リヒャルトも到着した。  そして、明日。  ペネム・ダンジョンを行政区の人間たちにお披露目をする事になった。 「クリス。ダンジョンはどんな様子だ?」 「カズトさん!あのね。サイレントヒルの大きさのフロアが、今10階層までできたよ。言われたとおりに、ペネム街をぐるっと廻る地下通路を作って小部屋もいろいろなサイズで作った。あと・・・居住区と宿区からすぐにダンジョン経由で来られるようにしたよ」 「おっありがとう。それじゃ、明日のダンジョン見学は大丈夫そうだな」 「うん。もうリーリアお姉ちゃんとオリヴィエお兄ちゃんと見てきた!」 「魔物はまだ出していないのか?」 「うん。カズトさんからの許可を貰ってからにしようと、ペネムと話して決めたの!」  胸を張る。クリスの頭をなでながら、ペネムに念話で話しかける。 『ペネム。実際どうだ?』 『クリスの言う状態で間違いないです』 『あと、魔物だけど出せそうか?』 『大丈夫です。1階層は魔物出さないで本当にいいのですか?』 『あぁ魔核は大量にあるからな』 『解りました、2-5階層は一度倒されたらもう出てこないようにして、あとは自然発生のみにする。本番は、6階層からという事でいいのですよね?』 『1階層は草原。2階層も草原。3階層は森林。4階層は森林。5階層は森林だよな?』 『はい。広さも同じになっています。天候/気温/日照/魔素濃度は地上部分とほぼ同じになっています』 『ありがとう。6階層目からの事は、また今度話そう。とりあえずは、5階層から入られる洞窟を作成しておいてくれ』 『仰せのままに!』  これで大丈夫だろう。  クリスを一通り褒めてから、最終確認を行う事にした。  まずは、転移門の確認を行う。居住区と宿区と獣人街の小屋に設定が完了している。 『ペネム。居住区と宿区から入る場合には、登録した魔力パターン以外は入られないのだよな?』 『はい。ダンジョンスキルでできるので、そうしております』 『反対はできるのか?』 『反対?・・・登録した魔力パターンの者は転移できない様にするのですか?』 『そうだ?できるか?』 『もちろんです』  話しを聞いていると、相当細かく設定できるようだ。  居住区と宿区に関しては、このままにした。小屋・・・商業区から入る場所に関しては、いきなり2階層目に飛ぶようにしてもらった。1階層目は、商業区と行政区で使う事にする。今、商業区と行政区は残すが、市場はダンジョン内に移動させる。市場への入場を転送門で行う事にする。行政区も同じだ。避難場所としてダンジョンを使う事にする。建物がまだ建てていないので、スーン達に頑張ってもらう事にしよう。これで、商業区の敷地問題も少しは緩和されるだろう。  リヒャルトたちが到着した事で、一気に商隊が増えた。増えた商隊を収めるために、街の外に商隊を留める場所を作ろうかと思ったが、市場が近いほうが便利だし、”ペネム公認商隊”には特権として商業区に屯所を作らせたほうがいいだろうと考えた。リヒャルトに相談したら、差別化にもつながるし、税金の納付先として商業区=ペネム街にするには丁度いいだろうという事だ。  ダンジョン内の第一階層はサイレントヒルと同じ広さがある。  適当な場所に、市場を構築する。転移門が自由に作られると、ここまで街作りが楽になるとは思わなかった。設置には、かなりの魔力が必要になるが維持するのにはそれほどかからないようだ。  魔核は、チアル・ダンジョンから運ばれてくるので今の所枯渇するとは思えない。  いずれ枯渇するのかもしれないが、そのときには、ペネム・ダンジョンが動き始めていればいい。大陸中の冒険者が集まるようになれば、自然と漏れ出す魔素だけでやっていけるようになるだろう。  小屋から入ることができる冒険者たちに公開する1階層実際は2階層は、街を作る事にしている。もちろん、冒険者が頑張って、今居る魔物を倒して階層を解放したらになるのだけどな。  ペネムに確認したら、俺が経験したような階層を越えた時に、アナウンスが流れるのはできないようだ。そのために、3階層に入るところで立て看板を用意する事にした。”1階層は魔物が出ないセーフエリアになりました”と・・・。誰かが、3階層に降りたら、2階層に配置している魔物を3階層に移動させる。  あとは、シュナイダー老やミュルダ老との話し合いになるが、ダンジョンの2階層に街を作って欲しいとお願いする。  さて、まずは、ミュルダ老とシュナイダー老とリヒャルトと獣人族の長や代表を集めて説明を行った。  かなり端折ったが、ペネム街の下にダンジョンができた。  転移門を今の所は、5箇所 ・商業区に作った小屋から伸びた通路の先に2階層に入られる転移門 ・居住区から1階層に入られる登録型の転移門 ・宿区から1階層に入られる登録型の転移門 ・行政区から1階層に入られる登録型の転移門 ・商業区から1階層に入られる登録型の転移門  これらを実際に動かしながら説明する。  使い方は任せるといいながら、俺の腹案も合わせて伝えておく、ペネムの説明では、俺の眷属と繋がりがある魔物は転移門を自由に行き来できるようになる。俺たちはかなり移動が楽になる。 「ツクモ様」  シュナイダー老がなにかあるようだ。 「ん?なに?」 「転移門の設置がまだ可能なら、一部の者だけが使える転移門をミュルダとアンクラムとサラトガに作成できないでしょうか?」 「必要?」 「はい。領主や長老衆などを粛清してしまったために、街としての機能が果たせなくなる可能性があります」 「あぁそうか、形だけの代官をおいたとしても、目の届かなくなったら、プロイス・パウマンやシュイス・ヒュンメルの様になってしまうかもしれないという事だな」  皆が申し訳無さそうな顔をする。 「・・・はい。恥ずかしながら・・・」 「わかった。ただ、リヒャルト。商隊の利用は禁止するからな。お前個人ならいいけど、荷物を持った商隊は禁止。手荷物くらいならいいだろうが、それ以上はしっかり移動する事」 「解っている。”えすえー”や”ぴーえー”をしっかり使えってことだろ?」 「そうだ。お前の商隊が、ミュルダとアンクラムとサラトガに支店を作って、お前がそこに行くために使うのは許可しよう。それぐらいの特典はいいだろうからな」 「え?いいのか?それができるだけで、だいぶ違う!ツクモ様。できれば」 「そうだな。条件は4つの街とSAかPAに3店舗以上店を出す事にしようか。申請制にして、ミュルダ老とシュナイダー老には仕事が増えてしまうが頼むな」 「はっ」「・・・リヒャルト・・・お主も手伝えよ!」  確かに、お目付け役は必要だろう。  スーン達と獣人族の一部に頑張ってもらって、ダンジョン内街の建築に取り掛かる。ミュルダ老とシュナイダー老には、行政区の建築を頼む事にした。リヒャルトには市場を頼んだ。  後日、ゲラルトが到着して、職人区をペネム・ダンジョンの2階層に作る事になった。まだ、攻略されていないので、攻略後になるのだが、ダンジョンからの素材を買い取ったり加工したりするのに都合がいいという事だ。街の外観ができ始めてきたら、小屋から伸びる通路上の部屋は、各ギルドや行政区が使う事になる。  ゲラルト達ドワーフを竜族に紹介する。  行政区に来ている者たちだ。話をしていると、竜族としては自然と剥げ落ちた鱗は価値が無いものなので、自由に使っていい事になって、ドワーフ達が歓喜の雄叫びをあげていた。シュナイダー老から、市場がおかしくなるから、鱗のまま出荷するのはやめて欲しいと言われていた、この辺りの調整はシュナイダー老とゲラルトが行う事になった。  ゲラルトたちは、一般的な剣は防具を作る部隊と、生活用品を作る部隊と、俺の指示した物を作る部隊に分かれた。最後の部隊の最初の仕事は、俺に献納する剣を作る事だ。一本は、俺が持っていた拙い”刀作成の知識”を基にした日本刀を作ってもらう事になった。  ダンジョン公開に向けて、剣と防具も急ピッチで作っている。  生活用品に関しても同じだ。かなりの量が不足する事が想像できた。 --- そして、俺がペネム街に帰ってから1ヶ月  今日、ペネム・ダンジョンを一般公開する事になった。  ミュルダ老とシュナイダー老が後ろに立って、前でクリスが説明する事になった。  クリスを見つめる少年少女たちが居る。  ショルナ村からの人質として来ている子どもたちだ。他にも、前アンクラム領主の娘たち。名前は忘れてしまったが、サラトガからの難民に混じって保護を求めてきた、前サラトガ領主の息子だ。何か、仕事を下さいと懇願されたが、商業区や行政区を任せるには子供すぎる。だからといって冒険者にやらせるわけにはいかない。  ある程度の事情を話して、クリスの補佐をやらせる事にした。まだ子供だが、クリスと一緒に成長すれば、いいブレーンになってくれるだろう。見本となる大人が近くに居るからな。魔力がFに達していてスキルスロットがある者には”念話”を”黙って”付与した。  クリスの説明は、何度も何度も練習したのだろう。  滞りなく進んだ。  冒険者ギルドのギルド長は、熊族のロータル=リーロプが行う事に決っている。しかし、これは仮の処置で今後適正を見ながら適任者を探すことになっている。クリス達は、冒険者ギルド預かりとなる。  冒険者ギルドの規約は、解体したミュルダの冒険者ギルドとサラトガの冒険者ギルドから拝借した。職員に関しても身元確認と身体検査思想チェックを行って問題ないと判断された者から雇った。 --- さらに2ヶ月  リヒャルトの商隊が回っていた集落や村々から、移民が集まりだした。  集落や村ごとの移住も思った以上に多かった。同時に、アトフィア教によって迫害されていた獣人族やハーフが、街の話を商隊に聞いて移住してきた。  ミュルダ老は、悲鳴に似た愚痴を日々つぶやいている。  宿区経由で、ログハウスに来て文句を言って帰る。シュナイダー老もだ。宿区は、すでに”宿”ではなく行政区や商業区の一部の者たちの別荘区となっている。  温泉施設を作ったことで拍車がかかった。行政区に住んでいた者たちがほとんどが宿区に移動してしまった。  実質の行政はペネム・ダンジョン内で行っている。空いてしまった建物を、商業区で店を開いていた人たちの住居兼事務所にするか?とリヒャルトに聞いたら二つ返事で賛成された。商業区が手狭になってきたのがその理由だ。ダンジョン内の街は、冒険者相手の店だけになっている。在庫や本店は商業区や自由区に作っている。出店感覚だ。本店機能として、商業区が必要になっていたのだ。  商隊や出店を、ダンジョン内にだした店には、冒険者から直接仕入れることもOKにしている。  冒険者が直接市場に持ち込むことはできない。市場に登録している商隊を使うしか無い。この辺りはまだ微調整が必要だと思ったが、まずは俺が決めたルールでやってもらうことにしている。  居住区は変わらない。チアル・ダンジョンに潜って得た物を市場に流している。  宿区は、ペネムで働く者たちの別荘になっているが、基本的には俺に忠誠を誓った者たちが住んでいる。俺がそうしろと言ったわけではないが、ミュルダ老やシュナイダー老たちが自主的に決めたことだ。  俺は、チアルダンジョンの攻略を行っていた。  七十九階層まで進むことができた。クリスが、ダンジョン区の運営や調整をペネムと相談しながら行っているので、チアルダンジョン攻略には連れて行っていない。  攻略は、俺。カイ。ウミ。ライ。リーリア。オリヴィエ。エリン。の布陣だ。階層踏破のための道が見つけられなくて、なかなか階層を降りることができない以外の問題はない。楽しく、魔物を倒しながら攻略していくことにした。  七十九階層まで進んだが、目的の記憶スキルがでてこない。レベル8のスキルカードもでてきているが、俺が聞いている”偽装”や”完全地図”や”記憶”のスキルカードはかなりのレアなのかでてこない。ここまで深い階層だと、魔蟲でも限られた者しか入ってこられない。それがスキルカードが集まらない理由にもなっている。  ここまで深い階層でも、でてくるスキルカードは他のレベルの上位版だけだ。困ったことに、レベル8なんて使いみちが無い・・・と思っていた。  価値的には1千万程度になるのだが、両替もできなければ使い所も限られてしまう。死蔵に一直線だったレベル8のスキルカードだが、レベルの低い魔核に付与すると使用回数が多くなることがわかって、俺以外が魔核にスキルカードを付与する時に積極的に使ってもらうことにした。リヒャルトやシュナイダー老からはすごく反対されたが、ゲラルトたちは喜んで協力してくれた。  神殿区も大きく様変わりした。神殿と”クズどもに心を壊された子どもたちの保護施設”がある。神殿には獣人族の巡礼者が訪れる。巡礼者を受け入れるために宿や商店ができ始めている。  保護施設の子どもたちの情報はレポートとして俺にだけ届けられている。”喋った”とか”笑った”などの小さな変化が届けられる。しかし、夜になると震えたりなにかに怯える状態が続いている記憶を消しても心の傷は治らないかもしれない。 /*** アトフィア教 総本山 ***/ 「向かった者たちが帰ってきたのか?」 「はい・・・」 「どうした?」  立派なローブをまとった男が、跪いて居る男を問い詰める。  男の報告を聞いた立派なローブをまとった男は、手に持っていたカップを側に控えていた侍女に向かって投げてしまった。 「すまぬ。そち達を叱ったわけではないのだぞ、あぁそうだ。後で、儂の部屋に来なさい。慰めを施してあげよう」  立派なローブをまとった男は、跪いている男に向けるのとは違う顔で、侍女たちを舐めるように見てから告げた。 「お前が、くだらない報告をするからだ!解っているのか!」 「はっはい。教皇様にはお耳汚しでした。申し訳ありません」 「この件は、お主に任せる。人族以外が支配する場所が有ってはならない!わかるよな!」 「はっ!」  教皇と呼ばれた男は、侍女の腰に手を回してから立ち上がって部屋を出ていく  残された男は、口元に笑みを浮かべながら立ち上がった (愚物が!しかし、教皇は教皇だ!あの街を手に入れて、俺が好きにできれば、俺が枢機卿に・・・いや、教皇になることも夢ではない!)  男は、教皇と呼ばれた男に大事なことを説明していない。聞かれなかったから答えなかったと言い逃れできるようにしているのだが、もし聞かれていてもミスリードするように報告するつもりでいた。  獣人族の街。ペネム。既に、サラトガとミュルダとアンクラムを支配下においているのは間違いない。仕切っているのは、獣人族だそれだけではなく、ハーフも多数報告されている。街だけではなく、近隣の村々や集落を取り込んで大きくなっている。アトフィア教を徹底的に排除している。  そして、アトフィア教として許せないことが、獣人族が人族を支配している構図になっている。この報告だけで、近視眼的な輩は動き出すだろう。  報告しなかったのは、ダンジョンが存在していること。スキルカードが大量に出回っていること・・・そして、治療が使えるハーフが存在すること・・・回復を持った人族が存在していること。 (スキル回復が使える者を、俺が保護して、聖女認定する) (それだけで俺の発言力は枢機卿を上回るかもしれない。同時に、スキル治療が使える者も支配できれば・・・笑いが止まらない) (あとは、教会内部のバカどもに情報流して・・・) (教皇からの”お主に任せる”この言葉をいただけた) (聖人たちを動かすこともできる。まずは、討伐隊の派遣からだろうな) (クックククク。楽しいことになりそうだ)  男は、部屋の中に居た執事風の男から渡された、公式文章を読んでサインをした。  ペネム街のことは”お主に任せる”の、一文がある事を確認している。ほかはどうでもいい。男が叱責されたことなども書かれている。叱責された事実は、減点になるのだが、男はそれ以上にか輝かしい未来を夢見ている。  サインした物を執事風の男に渡して、部屋を出る。  これで、先程の文章が公式発表されることになる。

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