黒兎少女
クラスメイト(1)

作品に栞をはさむには、
ログイン または 会員登録 をする必要があります。

 まだ薄暗い早朝だった。  その少女は清楚な美人だったが、異常に生気の乏しい表情をしていた。まるで儚い幽霊のように見えるほど。  だが、あてどもなくさまよっているわけではなかった。目的があってここへ来たのだ。パンツルックの動きやすい服装なのもそのためだった。  カンカンカン──  踏切の警報音が鳴りはじめ、遮断棒が下りる。  ふだんはもっと遅い普通の時間に、高校の制服姿で、少女はこの踏切をわたって通学していた。今とは別人のような、若くまばゆい輝きを放って。  カンカンカン──  少女は遮断機のすぐ手前で待っていた。昨夜思い立って以来、ほんとうに待ちわびていた。  この踏切から次の駅まではまだ距離があるため、電車は相当のスピードを出していた。彼女はそのことを知っていただろう。  少女は一片の躊躇も見せなかった。1秒でも早く、この絶望から逃れたいという願いがそうさせたのだ。  素早く遮断棒をくぐり、電車の正面に確実に飛び込む。運転士は急ブレーキをかける間もない。  少女は轟音を響かせる鉄の車軸に巻き込まれ、制服と皮膚を剥ぎ取られ、叩き潰されるようになんども身体を轢断され、数秒後には変わり果てた細切れの肉片と化して散乱した。

応援コメント
0 / 500

コメントはまだありません