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 魔界門が開かれ、出てきたのは……ただの少女だった。  美しい純白の髪に血のような深い赤の瞳。絶世の美女という言葉が当てはまるとしたら彼女しかいないだろう。  そんな彼女に見とれ、一瞬みな動けなくなってしまう。しかし彼女が手を構えることで我に返る。 「ッ! 《アイギスの盾》」  ドーム状のガラスのようなものがエインズ達を包む。しかしその守りは無意味となる。彼女の手から魔法が発せられることはなかったためだ。 (ふらふらしていて魔法が打てない――魔力枯渇? それともただのハッタリか? いやそもそも魔界門を広げることができるやつをそのまま帰すことはできない。ならば……) 「グリード!」 『ガッテン!』  すると彼女のいる床が爆発し、少女は地面に倒れる。 「《魂魄時空停止》!」  少女は床にうつ伏せたまま、ピクリとも動かなくなる。呼吸もしていないようだ。 「久々に使ったがやはりこのスキルは使い勝手が悪いな」 『で? どうするんだよ。魔界門を強制的に大きくする方法なんて一つくらいしか無いぞ』 「あぁ、となると事情徴収だな」 『エインズ、出てきてもいいぞ』  透明だったエインズの体に色がつく。《不可視化》は対象を見えなくする事ができるスキルだ。音や匂い、熱などを完全に遮断する《感知不能化インビシブル》の下位互換のスキルである。 「あの、彼女は大丈夫なんですか?」 「ああ、一時的に動けなくしているだけだ。けど問題がひとつあってな」  ヴァージルが困ったように頭をかく。 「と、いいますと?」 「このスキルは対象を完全に動けなくするものだから会話ができないんだ。だからお前の黒砂で縄を作ってくれないか? 強度は高くなくていい」 「わかりました」  エインズが左手を掲げると黒砂が集まり紐状になる。 「よし、じゃあこれを巻きつけて《封魂》……と、次に縄を《魂魄時空固定》……よし!」  ヴァージルが作業を終えた頃彼女の体が動き出した。  呼吸を整えているのかひゅうひゅうという音と同時に体が上下している。  ある程度呼吸を整えた頃、彼女は興奮しきった顔でエインズに向かって一言。 「おい! この紐はなんだ! 全然動けねぇじゃねぇか! ぶっ飛ばすぞ!?」  発せられたのは華奢な見た目とは裏腹な最悪な口調だ。  エインズは面食らってしまいフリーズしている。 「はぁエインズ、替われ」  そう言うとヴァージルは少女の前に立ち、少女の顔に手をかざす。 「《鑑定》」 「は? てめぇぶっ殺すぞ!?」  ものすごい勢いでヴァージルを睨みつける。先程キレていたエインズなど眼中に無い。 「えー種属は……吸血鬼!? こりゃ珍しいな……で、個体名はエリザ・アイラン、スキルは特になしと」 「お前待ってろよ、今すぐこの縄を壊して……」  ぐぅ〜という音が響き、時が止まる。  しかしエリザの顔が真っ赤に染まり、時が動き出す。 『ハッハッハッハッ! お前腹が減っているのか!』 「うるせぇ! 杖ごときがしゃべるんじゃねぇ!」 「あぁん? 俺様はなぁかの有名な初代……」 「まぁまぁ、腹が減っているとは丁度いい。エリザ、うちに来い」 「そんなの嫌に決まってるだろ!」 「ただしお前に拒否権はない《魂魄停止》」  エリザがグダッと力が抜けたかのように倒れる。 「じゃあ帰るぞ」 「は、はい」 『カレーか? 任せとけ!』

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