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「で、よく眠れたか?」 『ええ、赤子だからかぐっすりですよ』 『俺様は一睡もしてないがな!』  エインズたちは昨日から、魔法で作った家で暮らしている。外見こそ木製で安そうだが、中はキッチンに風呂、ベットまであり、なかなかのものであった。 『今日から本格的に修行を始めるんですよね?』 「あぁ、と言っても魔力を使うだけだが」 『ちなみに俺様が座学をやるぜ!』 『え!?』 『なんか文句でもあんのか?』 『い、いえ』 「安心しろ、こいつは2000年以上生きてる。俺よりは有意義な授業をしてくれるだろう」  こうして、座学はグリード、実技はヴァージルが授業をするようになった。   ――五年後―― 『こうして、創造神が呼び出した七大神は七大属性とそれに対応する遺跡、ワールドアイテムを作った、ってことだな』 「なるほど」  修行を始めてからちょうど五年が経過した。グリードの授業は実際に見てきた経験から物語風に伝えるものであった。そのおかげか、この人――杖だが――が授業なんてムリだ、と思っていた事が申し訳ない位にはわかりやすかった。 「さて、座学は終わったな。こっからは実技だ」 「はい」  ヴァージルの授業では基本的に魔力の貯蔵量と回復量の増加を目的としたものだった。  最初のうちは次の日には二倍、また次の日にも二倍……とどんどん増えていった。今ではそんなに増えていかないが。    この方法はドラゴンの血という魔力回復剤のおかげで成り立っている、成長スピードこそ早いもののコスパ最悪の方法だった。 「今更なんですけど本当にいいんですか?」 「何がだ?」 「ドラゴンの血って高価じゃないですか」 「あぁ、そういうことか。まぁ俺一人でドラゴンを倒せるくらいには強いから安心しろ。それに、俺に勝てるやつなんて今生きている中で9人くらいしかいない」 「それって多いんですか?」 「さぁな。少ないんじゃないか? まぁこんな話は置いといて、だ。今日からは授業の内容を変更する」 『ほう、ついにをやるのか』 「あれってなんですか?」 「それをこれから発表する。それは……ダンジョン攻略だ」 「本当ですか!?」  エインズは自分の子供のような反応に自分で驚いてしまう。その時、グリードが話していた「魂や思考は肉体に沿ったモノとなる」という話を思い出した。  そのせいで、ダンジョンが楽しみだという高揚感と、自分が変わってしまったのではないかという不安感によって若干微妙な気分になる。  内心、自分が変わった事を内心喜んでいる事が更に不安を掻き立てる。 「では概要を説明しよう。そもそもエインズの目標はなんだ?」 「冒険者として大成することです」 『……なぁ、本当にそれでいいのか? 農業とかじゃなくて冒険者だと俺たちも教えられる事が多くて助かるが……』  グリードの言葉に同意するようにヴァージルは頷いた。  するとエインズは少しの間、顎に手を当てながら自分が冒険者を目指す理由を考えた。そして考えがまとまったのか恥ずかしそうに口を開いた。   「まぁまだ曖昧なんですよね。でも冒険者ってカッコいいですし。それに地球はともかく、アベルヘインなら力をもっていたほうがいいじゃないですか」  エインズの言葉を聞き、ヴァージルが安心したように頷く。 「エインズのその言葉を聞けてよかったぜ」 『ああ!』 「こんなこっ恥ずかしい話は終わりにしましょう! で、結局ダンジョン攻略の概要ってなんですか?」 「エインズの目標は冒険者として大成することだ。そこで、このダンジョン攻略には二種類の目的がある」 「といいますと?」  そう聞かれるとまさに自信満々といった感じで話しだした。 「グリードは殺した相手の魔力貯蔵量を自分の魔力貯蔵量に上乗せできるというぶっ壊れ性能を持っている。そこで一つ目の目的、魔力量の増加だ。最近は魔力量が伸び悩んできたからな。と言っても人間一人分くらい砂を生み出せるようになっただけでも相当な成長だが」 「で、二つ目の理由はなんですか?」 「失敗経験から学ぶことだ。今のエインズは魔力量が多いだけの一般人だ。そこで敵と戦い、己の戦い方を身に着けてほしいんだ。どうだ? 一石二鳥の計画だろ!」  説明を終えた後もなんだか嬉しそうな空気をまとっている。 (あんがいお茶目だな……) 『前置きはこんくらいにしてとっとダンジョン攻略と行こうぜ!』 「ああそうだな。よし! それでは“魔王の迷宮”へ!」 「お〜」

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