「よし、じゃあグリードはカレーを作ってくれ」 『オーケー!』 「それじゃあ質問していいか?」 「いやだ!」 「はぁ……ったく、じゃあそこのソファーで休んでろ」 エリザはブスッとした顔でソファーに座る。バフンという音でも鳴りそうな勢いだ。 (結局座るんだ……) 「この調子だと話してくれる様子もないな」 「あの、魔界門を大きくしたってことはやっぱり……」 「あぁ、ワールドアイテムの一つ、【天地創造の片眼鏡】だろうな」 「この世界ができたときから地神様と共にこの世界の全てを見てきた片眼鏡……って言い伝えですよね?」 「あぁ、そしてこの世の全てを知り、干渉することができるものだ」 「そんな物があと六個もあると考えると最悪ですね……」 「まぁこれはワールドアイテムの中でも特に強いものだが;な。そういえばその腕についてだが……」 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 「……だから、わかったか?」 「わかりました! あ〜今から楽しみだな〜」 『おーいできたぞ〜』 「お、ちょうどいいな」 一連の話を終え、テーブルへと向かう。ちなみにちゃっかりエリザも座っていた。 そしてテーブルには大量に野菜が乗ったカレーとサラダが乗せられていた。鼻をくすぐるスパイスの香りに思わず口の中が涎であふれる。 『うちの畑で取れたニース、ケルチャラ、ペプリカ……その他様々な野菜を入れたカレーだ! いわゆる夏野菜カレーと言うものだな!』 「じゃあ食うとするか!」 「はい!」 「「いただきます」」 カチャカチャと音を立てながらものすごいスピードで食べ進めていく。 しかしエリザは食べようとしない。 「どうしたんだ? お前も食べろよ」 「……食べていいの?」 「座っといてなに言ってるんだ、いいに決まってるだろ。冷める前にとっとと食え」 「……いただきます」 カチャカチャという音が鳴り止み、エインズとヴァージルが顔を上げた。その時、部屋には嗚咽が響いていた。 「どうしたんだ?」 「こっ……こっんな……に、やさ……やさっしく……してもらっ……たの……初めて、だから」 そう言い終わった時、エリザの中で何かが溢れたのか大粒の涙が頬を伝った。それを堺にどんどん涙が溢れて来る。 しまいには、子供らしくワンワンと泣きはじめた。 「まぁ安心しろ。飯もあるし寝るとこもある。そんでもって俺たちはお前の味方だ。なにも心配することはない」 「う、ぅわぁぁぁ」 ヴァージルの言葉でも一度涙がぶり返して来たらしい。そんなエリザの背中をゆっくりとヴァージルが撫でる。 「さぁ、盛大に食おうじゃねぇか!」 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 「改めて聞くがどうして【天地創造の片眼鏡】を持ってるんだ?」 「拾った」 「はぁ……ワールドアイテムってのは、それ一つで世界がひっくり返るような代物ですよ? それを拾ったって……あなたの家は宝物庫か何かですか?」 「うるさいうるさい!」 そう叫びながらベットの上で暴れる。 というのも、昨日エリザは食べながら寝てしまったため、朝から質問をしている。……のだが、ずっとこの調子だ。 「ったくどうしようもねぇなぁ。よし! 朝飯にするか!」 「わーい!」 「ただし! どこでこれを拾ったかを言ってからだ。言わないなら朝飯は抜き!」 「ドケチ!」 『言えばご飯もらえるんだぞ?』 「……だから拾ったって言ってるじゃん!」 耳がキーンとするような高く、うるさい声がリビングまで届く。 元エインズの寝室には呆れたような空気が流れていた。 『なぁ、さっき言ってた貴族だっての、もしかして本当か?』 「本当に決まってるだろ!」 「じゃあなんでそんなに口調が荒いんだ?」 「……たの」 「なんだって?」 「捨てられたの!」 「一応聞くがどうして捨てられたんだ?」 「……魔力が回復しない呪いがあるの!」 一瞬皆がキョトンとする。 「いや、昨日鑑定したときには呪われてるなんて……」 「病気なの! 魔吸なんたらかんたら障害って病気!」 (ほとんど覚えて無いじゃん……でも呪いってことなら……) 「奇遇ですね、僕も呪われているんですよ」 「あんだけ硬い縄を作れる奴が!? そんなわけ無いでしょ!」 「……あれはヴァージルが加工を施したもので……まぁ良いです。とにかく! 僕は魔法が使えない呪いがかかってるんですよ」 「じゃああの縄はスキル?」 「ええ、“人一人分ほどの砂を浮かせる能力”です」 「へんなの!」 「なのでエリザさん」 エインズはそう言いながら立膝になる。ベットに座っているエリザと同じ目線の高さだ。 「魔法だけが全てじゃないんです。貴方には他にもいろいろな魅力がありますよ」 「み、みりょ!?」 エリザの顔が隅から隅まで赤く染まる。 『ひゅ〜熱烈的だなぁ!』 「え? 僕はあくまでも魔人なら魔法じゃなくても戦えるって……」 「まぁ恋愛は自由だからな」 「ヴァージルさんまで!」 「あ」 エリザはその時、脳がキャパオーバーしたために倒れてしまった。
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