「で、勘当されたお前はアイラン家に預けられた魔族の秘宝を持ってここに逃げてきたと……」 「最初から理解してよ!」 一連の事情聴取を終えた部屋はくたびれた様な空気感に包まれていた。 「……ご飯にしましょうか」 「いえーい!」 エリザだけが意気揚々と言った感じでリビングへと向かう。 そのほかの三――いやニ人と一つは重い足取りでリビングへ向かう。 『作る気がおきねぇから卵かけご飯だ』 「うぉ〜!」 「じゃあ、いただきます」 食べ始め、段々とエインズ達にも覇気が出てきた。 「それでエリザ、お前はどうする?」 頬に食べ物を詰めたまま、ヴァージルはエリザに問う。 「……また別のところに行く」 『そりゃまたどうして』 「パパ達が私を追いかけてきてるから、私の近くにいると危ない……」 「はっ! お前の親父くらいどうってこたぁねぇ」 そう言いながらニヤリと笑う。 しかしエリザの表情は凍りついたままだ。 「パパはワールドアイテムを預けられるくらい強いのよ!? それを倒すなんて!」 ヴァージルは少し考え込む。いや、長い間考え続けた。考え、考え、考え続けた。そしておもむろに顔を上げると呆れたような顔をした。 「本当は今話すべきじゃないのかも知れないが、俺も堪え性が無くてなぁ……………………俺の正体は“魔神”と忌み嫌われる初代魔王の側近、七つの大罪【強欲】のヴァージル・ザ・マモンだ」 一瞬沈黙が部屋を支配する。 エインズは目を見開き、エリザは震えている。 「そ、そんなわけないでしょ! 『初代魔王は、創造神様によって“全滅した七つの大罪”を見て本性を現し、魔神の姿となった』という言い伝えよ!」 「歴史が教科書通りとは限らない。俺はそのあと、人間の魂魄師によって復活したんだよ」 そう言いながら腕を捲る。現れたのはゴブリンを象った紋様だった。 「!?」 「まぁ、そういう事だ。今は魔神の襲撃を受ける前……創造歴の頃と、魔神の被害から立て直そうとした再生歴では技術のレベルが天と地ほどある。今なおだ。そんな中で俺に勝てる奴なんてそうそう居なかった。現魔王もその中の一人だ」 「で、でも……」 「……信じられないのも分かるな。よし、俺が強い証拠を見せるか」 そう言いながら指輪を外す。途端、死にたくなる程の言葉にできない気持ちの悪い感覚がエインズ達を襲う。 エリザは立っていられず、床にへたり込みながら口元を押さえている。エインズはかろうじて椅子の上で姿勢を保ていている、と言った感じだった。 その様子を見て、ヴァージルは指輪を付け直す。 「ほらな。俺は今まで魔王狩りをグリードと共にしてきたから魔力量がバカみたいに多い。これが証拠になっているのかはわからないがな」 「ぅ……わ、分かったからもうあれはやらないで……」 「俺だってやりたくてやったわけじゃねぇさ」 しばらく休憩した後、話を再開した。 「じゃあエリザ、それ――俺が再生歴の魔王なんて屁じゃないってことを理解した上で、お前はどうしたい?」 「わたしは……ここに残りたい。いや、あなた達といたい」 「なんだか口調が良くなったなぁ」 「うるさい!」 ヴァージルは微笑みながらため息をついた。しかしあまりいい意味は無さそうだ。 「ふぅー、じゃあエインズ、エリザ俺と共に王都に来い。そこで剣聖の修行を受けるぞ」
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