3号機関車
3号機関車

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 とある山奥にある、小さな鉄道会社。  その会社の運営する、とある路線の一番端の駅の隣に一つの大きな機関庫があった。  その機関庫の中には、一台の古ぼけた蒸気機関車がいた。  彼の名前は3号機関車。  彼はこの鉄道が開業した頃からいる、年寄りの蒸気機関車。  先輪が2軸、動輪が2軸ある、テンダー式の機関車である。  まだ若かった頃、彼はたくさんの石炭や木材の入った貨車、それとたまに人が乗った客車を引っ張って走り回っていた。  しかし最近は彼より新しいディーゼルや電気機関車が走っているため、彼が線路を走ることはほとんどなかった。 「はぁ、惨めじゃのう。蒸気機関車なのにこうやってずっと車庫にいるなんて。炭水車の石炭が湿気って使い物にならなくなるわい」 「はいはいそうですね、まだ走れるうちに爺さんも博物館に行きなよ。今でも動けること自体が奇跡なんだから」  若い機関車はそう言うと軽快な警笛を鳴らし駅を出発していった。 「は~最近の機関車ときたらすぐに解体やら博物館と言いおって、ワシだって頑張れば時速72kmくらい出せる。まだまだ若いのには負けんわ」  3号機関車はそう言ったが、自身が時代遅れだと言うことはわかっていた。  若い機関車によると、都会では銀色に輝く電車や時速210kmで疾走する電車がいるらしい。  そんないかにも新しいのと比べ、自分は真っ黒で遅くとても古いとわかっていた。  そこへやってきた機関士と機関助手はそんな3号機関車を見て言った。 「落ち込むなよ3号機関車。これから客車を引いて町まで行くんだ。そうしたら気分もよくなるさ」  それからふたりは3号機関車を点検し火室に石炭を入れ火をつけた。  するとボイラーがぐつぐつと沸騰し力が沸いてきた。 「ポーッ!よーし力が湧いてきたぞ!ワシだってまだ頑張れるところを見せてやるんじゃ!」  そう言うと3号機関車は客車を集め、駅のホームへ行った。 「久しぶりの客じゃ。今日も頑張って走るぞ!」  それから3号機関車はシュッポシュッポと軽快な音を奏でながら白い煙をたくさん吐き出して走った。  途中、駅に止まりながら走っていると、やがて3号機関車の気分はよくなっていた。  軽快な走りで町の駅に到着すると、まるで若くなったような気分だった。  そんな中、国鉄の赤い電気機関車がやってきて言った。 「これはこれは、鉱山鉄道の爺さんじゃないか、こんなところに何のようだい?これから解体工場へ行くんか?」 「コラ!年寄りをバカにしおって!そんなこと言っているといつか罰が当たるぞ!」  3号機関車はそう言ったが赤い電気機関車は無視した。  そのまま彼は警笛を鳴らし、赤いボディーを見せつけながら走っていった。  彼がいなくなると3号機関車は水と石炭を補給し、帰りの列車を引く準備をした。  それから3号機関車はお客を乗せて元来た道を戻ってきた。  途中、海辺の駅で反対側から来る貨物列車と行き違いするために止まった。  3号機関車はこの海の見える駅が好きだった。  しかしあと何回この駅に来られるかと思うと少し悲しい気持ちになった。 「この海も後何回見られるんじゃろうか」  それを聞いた機関士は言った。 「さあ、それは僕たちはわからないね。だけど冬になればまた来られるさ」  それからしばらくして、反対側から貨物列車が来ると3号機関車はまた走り出した。  終点の端の駅に着き客を下ろすとまた機関庫へ戻っていった。  これ以降3号機関車はしばらく走ることはなかった。  彼がまた走ることになったのは寒い冬になってからだった。  冬は3号機関車にとって忙しくも楽しい季節だった。  なぜなら冬はラッセル車を押して雪を跳ね飛ばすからだ。  雪が積もったある日、朝早くに機関士と機関助手がやってきた。 「おーい3号機関車、仕事の時間だ。昨晩たくさん雪が降ったから頑張らないとな」  3号機関車は忙しいのは好きではない。  しかし最近は車庫でほかの列車を眺めることしかできなかったのでうれしかった。 「うんしょ、こらしょ、どっこいしょ。やっぱりラッセル車は重いのう。しばらく走ってなかったせいで体がなまったのじゃろうか」  それから3号機関車はたくさんの場所を除雪した。  端の駅から町の駅まで一生懸命、他の列車のために雪を除雪した。  もちろんあの好きな海辺の駅も除雪した。  夜になり車庫に戻ってくると、他の機関車と一緒に寝ようとした。  すると駅の中から機関士たちと知らない人の声が聞こえてきた。 「えぇ!?3号機関車を廃車にするんですか!?」  3号機関車はその話を聞き驚いた。 「ワシが廃車じゃって!?」  3号機関車は聞き間違いじゃないのかと思いながら話の続きを聞いた。 「あぁ、そうだ。キミたちならわかるだろう。来年、4年に一度の全般検査がある。全般検査にはとても時間とお金がかかる。昔はディーゼルや電気の故障が多かったから予備として必要だったが今はもう不要だろう。私も悲しいがスクラップにするしかないだろう」  3号機関車は叫んだ。 「嫌じゃ!ワシはまだ走りたいんじゃ!」  機関助士は言った。 「確かに3号機関車は明治の汽車ですからね。釜に火を入れればよく石炭が燃え、火の粉も出さずしっかりと走ってくれるいい機関車ではありますが、乗り入れ先からも疎まれているので仕方ありませんね」 「そこでだ。キミたちはこれから別の機関車を常務してもらうために、これから仕事の合間に訓練を行ってもらう。一か月後に3号機関車は廃車するからそれまでにしっかり運転できるよう頑張ってくれ」  一か月後に廃車。  それを聞いて3号機関車は大きな声で泣いた。  普段は3号機関車をからかうほかの機関車たちも今日は彼に何も言わなかった。  翌日の朝、機関士と機関助手がやってきた。 「おーい3号機関車、仕事の時間だ。さあ出発の準備するぞ」  昨日のことが嘘であってほしい3号機関車は昨日のことについて聞いてみた。 「機関士さんと機関助士さん。昨日の夜、ワシが廃車される話が聞こえたのじゃがそれは本当か?」  するとふたりは点検ハンマーの動きを止めて3号機関車に言った。 「残念だがそうみたいだ。僕たちもどうにかしたいと思っているが俺たちでは何もできない。とても悲しいが廃車にするしかないみたいだ」 「嫌じゃ!廃車は嫌じゃ!ワシはまだ走りたいんじゃ!」  しかし機関士は悲しそうに言った。 「それは俺たちもわかる。しかしおまえは非力でのろい。おまえを動かすための施設の維持費も洒落にならん。残念だが最後の一か月、一緒に頑張ろう」  それから3号機関車は最後の日まで頑張って働いた。  時にはラッセル車以外にも、貨物や客車を運ぶこともあった。  3号機関車の廃車される日が来た。  今日は一段とふぶいていたが朝の除雪はせず、久しぶりに一人で機関庫にいた。  初めは機関士たちに廃車は嫌だと言っていたが、今はもうどうしようもないと諦め何も言わなかった。  3号機関車が一人で機関庫にいると、いつものように機関士と機関助手がやってきた。 「おーい3号機関車、最後の仕事だ。これから何も引かずに町の駅まで行く。そこから国鉄さんの電気機関車と一緒に工場まで行くんだ。そして残念だがそこで解体だ」  機関士の話を聞いて3号機関車は目をつむりながら言った。 「残念じゃのう。今日が最後じゃないんて」  そうやって落ち込んでいると、駅長が走ってきた。 「大変だ!100年に一度の大吹雪のせいで列車がトンネルの中で故障してしまった!町側のトンネルは雪崩でふさがってしまい助けに来れない。おまけに架線が切れて助けに向かった列車も動けない!すまないが3号機関車以外こっちにいないから救援に行ってくれ!」 「なんじゃと?それは大変じゃな。早く助けるんじゃ!」  それから機関士と助手は急いで点検を済ませるとトンネルまで救援しに行った。  3号機関車がトンネルに着き、ゆっくりと中に入っていくとまだ新しい電気機関車がいた。 「ごめんよ爺さん。ふぶきのせいで雪が隙間に入って回路が壊れてしまったんだ」 「気にするでない。壊れることくらい誰にでもある。さあ引っ張り出すぞ」 「ありがとう爺さん。動けなくなった救援列車も繋がってるけどがんばって」  それから3号機関車は電気機関車と連結し、後ろ向きで列車を引っ張った。  二台の機関車といつもより多い客車はとても重かった。  しかし3号機関車は一生懸命引っ張った。 「重すぎて車輪が空回りしてるようじゃ。しかしここで諦めたら客が凍えてしまう。ゆっくりでも着実に引っ張るぞ!」  それからしばらくすると3号機関車はふたつの列車を引っ張りながら駅まで戻ってきた。 「ありがとう3号機関車!」  ふたつの列車に乗っていた乗客は口々に3号機関車へ言った。  3号機関車は自動連結器が痛かったがそれを聞いて嬉しかった。  数週間後、雪崩でふさがったトンネルも通れるようになった。  そこで今度こそ廃車のために町へ行くことになった。  やはり廃車になるのは嫌だった。  しかし最後にたくさんの人を助けることができてとても満足していた。  他の機関車たちにもこの話は広まり、3号機関車を称賛した。 「爺さん聞いたよ。ふたつの列車を助けたんだって?すごいね」  しばらく走ると町の駅に着き、迎えの機関車が来るのを待った。  すると国鉄の赤い電気機関車が彼の目の前にやってきた。 「よう爺さん、久しぶりだな。本当に廃車される気分はどうだ?」 「最後まで失礼なやつじゃのう。ほら話してないで行くぞ」  赤い機関車は連結すると工場に向かって走り出した。  しばらく走っていると普段は来ない都会へやってきた。 「ここへ来るのも久しぶりじゃな。海の向こうから来た頃とは大違いじゃ」 「そりゃ開業した頃なんてろくに車も走っていない時代だからね」  3号機関車の言葉を聞いて機関士はそう言った。  昔と違う景色を眺めながら走っていると、工場に着いた。  工場の端にある草の生えた線路へ連れていかれると赤い機関車と切り離された。 「今までありがとう3号機関車。これまでのことは忘れないよ」  そう言うと機関士と機関助手は離れていった。  それから3号機関車は最後の時が来るまで寝ていた。  たまに知らない列車が来ると彼を見て驚いた。 「何あの機関車、大正生まれのハチロク爺さんよりも古そう」 「始めてみたよあんな機関車。100kmも出せなさそう」  工場に来て何日か過ぎた頃、誰かのやってくる音が聞こえてきた。 「とうとう解体されるんじゃな。いざ解体されるとなると寂しいのう」  もうこれまでか。  そう思った次の瞬間、やってきた人は3号機関車に油を注いだ。 「なんじゃ?解体するのになぜ整備してるんじゃ?」  そう言うと見慣れた機関士と機関助手がやってきて言った。 「やったぞ3号機関車!この前、トンネルで壊れた列車を救出したよな?どうやら全国紙に載ったらしく、関東の博物館からぜひ譲って欲しいと言われたんだ。動態保存だからこれからも走れるぞ」  それを聞いた3号機関車はとても喜んだ。  機関士たちも泣いて喜んだ。  それから3号機関車は工場で軽い検査が行われると、貨物列車の最後尾に繋がれ関東へと旅立った。  運ばれる途中、見たことのないくらい大きな建物や長い列車を見かけた。  また、うわさの銀色に輝く電車や時速210kmで疾走する電車を見た3号機関車はとても興奮した。  それから3号機関車は博物館が新たな居場所となった。  全国各地から集まったいろんな列車、真新しい試験中の列車。  そして毎日やってくる小さな子どもたちと大きなお友達に囲まれていた。  長距離を走ることはもうなかったが、3号機関車は毎日がとても楽しかった。  今日もまた、3号機関車は子どもたちを乗せて走るのであった。

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