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「な、何を、突然」  フユの言葉に、ファランヴェールはたじろぎを隠せなかった。しかしそれが図星ゆえなのか、それとも思いもしなかった言葉を聞いたからなのか、その違いをファランヴェールの表情から読み取ることはできない。 「ずっと、不思議に思っていたことがあるんだ。シティの地下で爆破に巻き込まれたときのこと。あのバイオロイドはなぜ、僕がシティの地下にいることを知っていたんだろうって。あの日、学校には帰宅届けしか出してない。シティに寄ったのも、カルディナと一緒にお姉さんの店に行ったのも、予定外のことだったのに」  フユが探るように、ファランヴェールの瞳をのぞき込む。  視線は外せない。ファランヴェールはそう思った。しかしフユの目を見続けていると、吸い込まれそうになる自分が怖くなり、視線を外したくなる。  その葛藤が、ファランヴェールを蝕んでいく。 「それは、フユを狙ったものではなかったからでは」  声が震えている。フユはそれを見逃してはくれない。 「僕も、だからそう思ってた。でも今日、カーミットさんが言ってたよ。僕が、テロのターゲットになってるって。そして、管理局と解放戦線が、裏でつながってるって」  フユの手がゆっくりとファランヴェールの肩をつかむ。 「それを、彼を、フユは信じるのか」  怯え。それが手からフユへと伝わっているだろう。  ファランヴェールの白く長い髪が、次第にソファへと広がっていく。フユの手にはそれほど力は込められていないのに、ファランヴェールは抗えない圧を感じ、後ろへと倒れていく。 「彼を信じるわけじゃない。でももしそれが正しいなら、殆どの疑問が解けるというだけだよ。ファル、貴方はあの日、僕を尾行してたんだよね。でなければ、あんなにすぐに、僕を助けには来れない」  身体能力だけで言えば、フユはファランヴェールの足元にも及ばない。ファランヴェールがフユをはねのけようと思えば雑作もなくできるはずであった。  しかしファランヴェールはそれができない。いや、したくない。この期に及んでも、ファランヴェールはフユが自分に触れていることに喜びを感じているのだ。 ――欲しい、欲しい……  体の奥底、あるかどうかもわからない『魂』から生まれ出ずる欲望でファランヴェールの体が満たされていく。  そのままファランヴェールは、ソファに仰向けに倒れた。腕置きからファランヴェールの髪が零れ落ちる。 「この学校はPI研究をしている。それについて、ファルがバイオロイド管理局に報告している。その情報が解放戦線に流れている。ファルはそれを知らなかったの? それとも知っていて」  ふとフユが寂しげな表情を見せた。体を起こし、ファランヴェールの肩から手を放す。 ――いやだ、いやだ、離さないで……  それは突然のことだった。ファランヴェールがその身を起こし、フユに抱き着いた。そのまま二人、もつれたまま床に倒れ込む。 「ファル、何を」  驚き、起き上がろうとするフユを、ファランヴェールが上に乗り、床に押さえつけた。
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